名称が似ている2つの加算、混同していませんか
訪問看護の加算算定でスタッフや管理者からよく質問が上がるのが、緊急訪問看護加算と緊急時訪問看護加算の違いです。名称が一文字違いで似ているうえに、どちらも夜間・休日の緊急対応に関係する加算のため、算定要件を取り違えてしまうケースが少なくありません。
結論から整理すると、この2つは加算の性質そのものが異なります。
- 緊急時訪問看護加算 24時間対応できる体制そのものに対する評価。月1回の体制加算。
- 緊急訪問看護加算 実際に緊急の訪問看護を行った実績に対する評価。訪問した日ごとの実績加算。
本記事では、この違いを制度上の位置づけ、単位数、算定要件、併算定の可否まで整理し、算定漏れや誤算定を防ぐためのチェックリストを提示します。
緊急時訪問看護加算とはどんな加算か
緊急時訪問看護加算は、訪問看護管理療養費に対する加算として位置づけられています。24時間いつでも利用者や家族からの電話連絡を受けられる体制を整備し、必要に応じて緊急訪問できる体制を確保していることに対する評価です。
主な特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 訪問看護管理療養費を算定する利用者 |
| 算定単位 | 月1回 |
| 単位数の目安 | 574単位(医療保険) |
| 要件 | 24時間連絡体制の届出、利用者との契約・同意 |
| 実際の訪問実績 | 不要(体制があれば算定可) |
ポイントは、実際にその月に緊急訪問を1件も行わなかったとしても、体制さえ整えて利用者の同意を得ていれば算定できるという点です。逆にいえば、契約書に24時間対応体制についての説明と同意の記載がなければ、体制があっても算定できません。
介護保険では区分がある
2024年度介護報酬改定により、介護保険の緊急時訪問看護加算はⅠ型とⅡ型に区分されました。
| 区分 | 単位数の目安 | 体制の違い |
|---|---|---|
| Ⅰ型 | 574単位/月 | 看護師が常時対応する体制 |
| Ⅱ型 | 315単位/月 | 看護師以外の職員が一次対応し、必要時に看護師へ連絡する体制 |
Ⅱ型の新設により、オンコール担当を看護師以外の職員が一次受付し、トリアージ後に看護師へ引き継ぐ体制でも算定できるようになりました。小規模ステーションでオンコール負担を分散させたい場合、Ⅱ型の活用を検討する価値があります。
緊急訪問看護加算とはどんな加算か
一方の緊急訪問看護加算は、主治医の指示に基づいて緊急に訪問看護を行った日に対して算定する実績加算です。訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費に対する加算として位置づけられています。
主な特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 主治医の指示により緊急訪問を実施した日 |
| 算定単位 | 1日につき |
| 単位数の目安 | 265単位 |
| 月の上限 | 14日 |
| 要件 | 主治医の指示、緊急性を要する状態変化の記録 |
緊急時訪問看護加算とは異なり、こちらは実際に訪問した日ごとに算定するため、月に何日緊急訪問を行ったかの記録が算定の根拠になります。訪問記録には、緊急訪問と判断した理由、主治医からの指示の有無、対応内容を具体的に残しておく必要があります。
2つの加算の違いを一覧で比較
| 比較項目 | 緊急時訪問看護加算 | 緊急訪問看護加算 |
|---|---|---|
| 加算の性質 | 体制加算 | 実績加算 |
| 算定頻度 | 月1回 | 訪問した日ごと(月14日限度) |
| 評価対象 | 24時間対応体制の整備 | 実際の緊急訪問の実施 |
| 必要な同意 | 利用者との契約時の説明・同意 | 主治医の指示 |
| 訪問実績の要否 | 不要 | 必要 |
| 単位数の目安 | 574単位(医療)/574・315単位(介護) | 265単位 |
この表からわかるとおり、体制に対する評価か、実際の行為に対する評価かという軸で理解すると混同しにくくなります。
両方とも算定できるケースとは
24時間対応体制加算の届出を行い、利用者の同意を得ているステーションが、実際にその利用者に緊急訪問を実施した場合、同一月内で両方の加算を算定することが可能です。
例えば次のようなケースが該当します。
- 月初に利用者と24時間対応体制について契約・同意を取得している
- 月の途中で主治医の指示により緊急訪問を3日実施した
この場合、緊急時訪問看護加算を月1回、緊急訪問看護加算を3日分算定できます。逆に、24時間対応体制の同意を取っていない利用者に緊急訪問を行った場合は、緊急訪問看護加算のみの算定となり、緊急時訪問看護加算は算定できません。
算定漏れ・誤算定を防ぐチェックリスト
加算算定でよくあるミスは、体制加算と実績加算を同じものとして扱ってしまうことです。以下のチェックリストで自ステーションの運用を確認してください。
- 24時間対応体制について利用者との契約書・重要事項説明書に明記しているか
- 緊急時訪問看護加算の算定要件(体制届出)を毎月確認しているか
- 緊急訪問を実施した際、主治医の指示内容を記録に残しているか
- 緊急訪問看護加算の算定日数が月14日を超えていないか確認しているか
- 介護保険利用者についてⅠ型・Ⅱ型どちらの体制で届出しているか把握しているか
- レセプト作成時に2つの加算を混同して入力していないか
これらは実地指導でも指摘されやすいポイントです。特に緊急訪問看護加算については、緊急性の判断根拠が記録に残っていないと算定要件を満たさないと判断されるリスクがあるため、訪問記録のテンプレートに緊急性の判断理由を記入する欄を設けておくと安心です。
オンコール体制設計との関係
この2つの加算は、オンコール体制の設計とも密接に関係します。24時間対応体制を整備すればするほど緊急時訪問看護加算による収益は安定しますが、その分オンコール当番のスタッフ負担も増えます。介護保険のⅡ型のように看護師以外が一次対応する体制を組み込むことで、加算収益を維持しながらスタッフの負担を分散させる工夫も検討に値します。
加算算定の要件を満たすことと、現場のオンコール運用を持続可能にすることは、経営判断としてセットで考える必要があります。
まとめ
緊急時訪問看護加算と緊急訪問看護加算は、名称は似ていますが、体制に対する評価か実績に対する評価かという点で明確に異なります。緊急時訪問看護加算は24時間対応体制の整備に対して月1回算定する加算、緊急訪問看護加算は実際に緊急訪問を行った日ごとに算定する加算です。要件を満たせば同一月内での併算定も可能なため、契約書の整備、記録の残し方、算定日数の管理を徹底し、算定漏れと誤算定の両方を防ぐ運用体制を整えることが重要です。
