令和8年診療報酬改定における訪問看護新設加算の全体像

令和8年(2026年)診療報酬改定では、訪問看護分野において複数の新設加算が導入される予定です。これらの加算は、地域包括ケアシステムの推進と訪問看護ステーションの機能強化を目的としており、適切に算定することで大幅な収益改善が期待できます。

新設加算一覧と算定点数

加算名称算定点数算定頻度年間想定収益
D to P with N関連加算150点/回月4回約72万円
オンコール体制強化加算200点/月月1回約24万円
重症者対応連携加算100点/回月8回約96万円
ICT活用看護情報連携加算50点/月月1回約6万円
地域連携推進加算80点/月月1回約9.6万円

D to P with N関連加算の詳細解説

算定要件チェックリスト

訪問看護師同席型オンライン診療に関連する新設加算では、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 医師の指示に基づく訪問看護を実施中の利用者
  • オンライン診療に対応できる通信環境の整備
  • 訪問看護師がオンライン診療研修を受講済み
  • 利用者・家族の同意書取得
  • 緊急時対応体制の確立
  • 診療記録の適切な管理・共有

実務対応のポイント

  1. システム環境整備

    • セキュアな通信環境の構築
    • タブレット・スマートフォンの配備
    • 電子カルテとの連携機能
  2. 職員研修プログラム

    • オンライン診療の基礎知識
    • 機器操作方法
    • トラブルシューティング
    • 個人情報保護対策

オンコール体制強化加算の算定戦略

算定要件の詳細

オンコール体制強化加算は、24時間対応体制の質的向上を評価する加算です。従来の24時間対応体制加算に加えて算定可能となります。

基本要件

  • 常勤看護師2名以上の配置
  • 緊急時平均対応時間60分以内
  • 月間オンコール対応実績10件以上
  • 外部委託先との連携体制構築

体制整備のステップ

  1. 現状分析

    • オンコール対応実績の把握
    • 対応時間の測定・分析
    • 職員の負担状況調査
  2. 体制見直し

    • オンコール担当者のローテーション見直し
    • 外部委託先との役割分担明確化
    • 緊急度判定基準の策定
  3. 質的改善

    • 対応マニュアルの作成・更新
    • 職員研修の実施
    • 利用者・家族への説明資料整備

重症者対応連携加算の活用方法

対象利用者の判定基準

重症者対応連携加算は、医療依存度の高い利用者に対する多職種連携を評価する加算です。

対象となる利用者

  • 人工呼吸器使用者
  • 気管切開・気管カニューレ使用者
  • 中心静脈栄養実施者
  • 24時間持続点滴実施者
  • 腹膜透析実施者
  • 褥瘡処置(DESIGN-R分類D3以上)

連携体制の構築

連携先連携内容頻度記録様式
主治医病状報告・指示確認週1回以上連携記録書
薬剤師服薬管理・副作用確認月2回以上薬剤管理記録
理学療法士リハビリ計画調整月1回以上PT連携記録
医療機器業者機器管理・保守随時機器管理記録
家族ケア方法指導・相談週2回以上家族支援記録

ICT活用看護情報連携加算の実装ガイド

必要なシステム要件

ICT活用による多職種間の情報共有を評価する新設加算では、以下のシステム要件が求められます。

技術要件

  • 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン準拠
  • HL7 FHIR準拠のデータ交換機能
  • 利用者同意管理機能
  • アクセスログ管理機能

運用要件

  • 情報共有ルールの策定
  • セキュリティポリシーの整備
  • 職員研修プログラムの実施
  • 定期的なシステム監査

段階的導入プラン

フェーズ1:基盤整備(改定前6ヶ月)

  • システム選定・導入
  • 職員研修実施
  • 運用ルール策定

フェーズ2:試行運用(改定前3ヶ月)

  • 限定的な情報共有開始
  • 課題抽出・改善
  • 利用者説明・同意取得

フェーズ3:本格運用(改定開始)

  • 全面的な情報共有実施
  • 算定開始
  • 効果測定・改善継続

地域連携推進加算の算定ポイント

地域連携活動の具体例

地域連携推進加算では、以下のような活動が評価対象となります。

必須活動(月1回以上)

  • 地域ケア会議への参加
  • 医療・介護関係者との症例検討会
  • 地域住民向け健康講座の開催
  • 地域包括支援センターとの連携会議

推奨活動(月2回以上で加点)

  • 在宅医療連携拠点での相談対応
  • 地域医師会との連携活動
  • 訪問看護実習生の受け入れ
  • 地域住民への啓発活動

活動記録の管理方法

記録項目記録内容保管期間確認者
活動日時年月日・時間5年間管理者
活動内容具体的な活動概要5年間管理者
参加者職種・所属・人数5年間管理者
成果・課題活動の評価・改善点5年間管理者
継続計画次回活動予定5年間管理者

新設加算による収益シミュレーション

ステーション規模別収益インパクト

小規模ステーション(常勤換算2.5名、月間延べ訪問回数300回)

  • D to P with N関連加算:月6万円
  • オンコール体制強化加算:月2万円
  • ICT活用看護情報連携加算:月0.5万円
  • 年間収益増加見込み:約102万円

中規模ステーション(常勤換算5名、月間延べ訪問回数600回)

  • D to P with N関連加算:月12万円
  • オンコール体制強化加算:月2万円
  • 重症者対応連携加算:月4万円
  • ICT活用看護情報連携加算:月0.5万円
  • 地域連携推進加算:月0.8万円
  • 年間収益増加見込み:約231万円

大規模ステーション(常勤換算10名、月間延べ訪問回数1,200回)

  • D to P with N関連加算:月20万円
  • オンコール体制強化加算:月2万円
  • 重症者対応連携加算:月8万円
  • ICT活用看護情報連携加算:月0.5万円
  • 地域連携推進加算:月0.8万円
  • 年間収益増加見込み:約376万円

算定開始に向けた準備スケジュール

改定前12ヶ月からの準備計画

12~9ヶ月前:基盤整備期

  • 新設加算の詳細情報収集
  • 現状の算定可能性評価
  • 必要な投資額の試算
  • 予算確保・計画策定

9~6ヶ月前:体制構築期

  • システム・機器の導入
  • 職員研修プログラム開始
  • 関係機関との連携体制構築
  • 運用マニュアル作成

6~3ヶ月前:試行・調整期

  • 模擬算定・記録作成
  • 利用者・家族への説明
  • 同意書取得
  • 課題抽出・改善実施

3~1ヶ月前:最終準備期

  • 算定要件の最終確認
  • 記録様式の完成
  • 職員への最終研修
  • 関係機関への周知

改定開始月:算定開始

  • 算定開始
  • 日次・週次での算定状況確認
  • 課題があれば迅速に改善
  • 月次での収益効果測定

算定漏れ防止のためのチェック体制

日次チェック項目

  • 算定対象サービスの実施確認
  • 必要な記録の作成・保管
  • システム入力の正確性確認

週次チェック項目

  • 算定要件充足状況の確認
  • 連携記録の整備状況
  • 利用者同意書の管理状況

月次チェック項目

  • 算定実績の集計・分析
  • 収益効果の測定
  • 改善点の抽出・対策立案

まとめ

令和8年診療報酬改定で新設される訪問看護関連加算は、ステーションの収益改善に大きなインパクトをもたらす可能性があります。しかし、適切な算定のためには事前の体制整備と継続的な運用管理が不可欠です。

特に重要なのは、改定前からの計画的な準備です。システム導入、職員研修、関係機関との連携体制構築には相応の時間を要するため、早期の着手が成功のカギとなります。

各ステーションの規模や特性に応じて、優先的に取り組むべき加算を選定し、段階的な導入を進めることで、確実な収益改善を実現できるでしょう。新設加算を最大限活用し、持続可能な訪問看護事業の運営を実現してください。