一次受けの外部委託は通知で明確に禁止されている
夜間の電話を外部に任せたい、という相談は訪問看護ステーションの管理者から繰り返し出てきます。オンコール代行と呼ばれるサービスの案内が届くこともあります。ただし訪問看護では、利用者・家族からの電話を最初に受ける役割そのものを外部に出すことができません。解釈の余地がある話ではなく、通知に文章で書かれています。
高齢者施設向けのオンコール代行がそのまま訪問看護に使えると説明されることがありますが、施設と訪問看護では制度の建て付けが違います。同じ言葉で案内されていても、訪問看護では採用できない範囲があります。
医療保険の届出基準には、利用者またはその家族等からの電話等による連絡及び相談が直接受けられる体制を整備することとしたうえで、当該訪問看護ステーション以外の施設または従事者を経由するような連絡相談体制、および訪問看護ステーション以外の者が所有する電話を連絡先とすることは認められないと記載されています。
介護保険側にも同じ趣旨の規定があります。当該訪問看護事業所以外の事業所または従事者を経由するような連絡相談体制をとることや、訪問看護事業所以外の者が所有する電話を連絡先とすることは認められない、という一文です。
どこに書かれているか
- 医療保険:令和8年3月5日 保医発0305第9号 別添の届出基準 2(1)
- 介護保険:老企第36号 第二の4(18)⑥(令和6年度改定で新設)
いずれも24時間対応体制加算(医療保険)、緊急時訪問看護加算(介護保険)の算定要件として定められています。サービスを検討するときは、事業者の説明資料ではなく、この2つの原文を先に読んでください。
外部に出せるもの・出せないもの
| 業務 | 外部に出せるか | 理由 |
|---|---|---|
| 利用者・家族の電話を最初に受ける | 出せない | 自事業所以外を経由する連絡相談体制は認められない |
| 利用者へ知らせる緊急連絡先の電話 | 出せない | 自事業所以外の者が所有する電話は連絡先にできない |
| 一次受けの後の相談・判断の支援 | 出せる | 受けた内容について外部の専門職に相談することは妨げられない |
| 記録の文書化・当番表の作成などの事務 | 出せる | 利用者からの連絡を受ける行為に当たらない |
| 緊急訪問そのもの | 出せない | 指定訪問看護は指定を受けた事業所が提供する |
線引きの基準は一つです。利用者・家族が最初にかける先が自事業所かどうか。ここが外部になった時点で要件を満たさなくなります。
看護師以外が一次受けする場合の条件
一次受けを看護師以外が行うことは、条件つきで認められています。ただし対象は当該訪問看護ステーションの職員に限られ、外部事業者のオペレーターはこの例外に入りません。あわせて次の整備が必要です。
- 対応手順を定めたマニュアルを整備していること
- 受けた内容を看護師へ速やかに報告すること
- 対応の内容を記録に残すこと
- 利用者から同意を得ていること
- 地方厚生(支)局長への届出を行っていること
事務職員が夜間の電話を受ける運用を考えている場合は、この5点が揃っているかを先に確認してください。どれか一つでも欠けたまま算定を続けると、要件を満たさない状態での算定になります。
この禁止はどの事業所に及ぶのか
注意したいのは、この規定が24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算を算定する事業所の要件だという点です。加算を算定していない事業所を直接縛る規定ではありません。
ただし、加算を算定したまま一次受けを外部に出せば、要件を満たさない状態での算定になります。加算の額は、医療保険の24時間対応体制加算でイが6,800円、ロが6,520円です。イとロの区分は看護業務の負担軽減の取組の有無によるもので、看護師以外が電話を受けられるかどうかで分かれるものではありません。
費用を比べるときの考え方
外部サービスの費用を自事業所の当番手当と比べるときは、比較の対象をそろえる必要があります。一次受けを含む見積もりは制度上そもそも採用できないため、その金額と当番手当を並べても意味がありません。比べるのは、一次受けの後に外へ出せる業務の分だけです。
検討の場では次を確認してください。
- 利用者・家族に知らせる電話番号は誰の名義か
- 最初に電話を受けるのは自事業所の職員か、委託先の担当者か
- 委託先が担うのは一次受けの後のどの業務か
- 対応の記録は誰がどこに残し、誰が確認するか
- 見積もりの中に一次受けが含まれていないか
まとめ
訪問看護のオンコールでは、利用者・家族からの電話の一次受けを外部に出すことができません。医療保険は保医発0305第9号の届出基準、介護保険は老企第36号に、自事業所以外を経由する連絡相談体制と自事業所以外の者が所有する電話を連絡先とすることを認めない旨が明記されています。
外部に出せるのは、一次受けの後の相談・判断の支援と事務処理までです。看護師以外が一次受けする例外も、当該ステーションの職員に限られ、マニュアル・報告・記録・同意・届出が必要です。負担軽減の手段を検討するときは、この線引きを先に確認してから費用を比べてください。
出典
- 訪問看護ステーションの届出基準(令和8年3月5日 保医発0305第9号)別添 2(1) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732114.pdf
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について(老企第36号)第二の4(18)⑥
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正(令和8年厚生労働省告示第74号・令和8年6月1日適用) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665206.pdf
- 訪問看護療養費に係る留意事項通知(令和8年3月5日 保発0305第19号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf
