訪問看護ステーションを開設し運営を続けるうえで、最初につまずきやすいのが人員基準の理解です。常勤換算2.5人以上という数字は多くの管理者が知っていますが、計算方法や欠員時の対応まで正確に説明できる人は意外と少ないのが実情です。本記事では指定基準に沿って、人員基準の考え方と常勤換算の計算方法、管理者要件、欠員時に取るべき対応を整理します。
人員基準とは何か
訪問看護ステーションの人員基準は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)に定められています。この基準は介護保険の指定訪問看護事業者だけでなく、健康保険法に基づく訪問看護ステーションにも準用される考え方であり、指定申請時の審査項目であると同時に、指定後も継続して満たし続ける必要がある運営基準です。
人員基準を満たしていない状態が続くと、指定取消や効力停止の対象となり得るため、開設時だけでなく日々の勤務シフト管理の中で常に意識しておく必要があります。
常勤換算2.5人以上の考え方
訪問看護ステーションに配置すべき看護職員の基準は次の通りです。
- 保健師、看護師又は准看護師を、常勤換算方法で2.5人以上配置する
- このうち1人は常勤の職員である必要がある
- 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を訪問看護の提供に当たる職員として置く場合は、実情に応じた適当数とする
常勤換算2.5人以上という基準は、必ずしも常勤職員を2.5人雇用しなければならないという意味ではありません。常勤職員とパート職員の勤務時間を合算し、常勤換算方法で計算した結果が2.5人以上であればよいという考え方です。この仕組みを理解していないと、採用計画や勤務シフトの組み方で無駄に人件費をかけてしまうことがあります。
常勤換算の計算方法
常勤換算方法は、当該事業所の従業者の勤務延時間数を、当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除して算出します。計算の基本式は次の通りです。
常勤換算数 = 事業所全体の従業者の勤務延時間数 ÷ 常勤の従業者が勤務すべき時間数(所定労働時間数)
この考え方は指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について(老企第36号)で示されている留意事項に基づくものです。具体例で見てみます。
よくある例として、ある訪問看護ステーションの常勤職員の所定労働時間が週40時間であるとします。この場合、以下のような勤務体制で計算します。
| 職員区分 | 週あたり勤務時間 | 常勤換算への寄与 |
|---|---|---|
| 常勤看護師A | 40時間 | 1.0人分 |
| 常勤看護師B | 40時間 | 1.0人分 |
| パート看護師C | 20時間 | 0.5人分 |
| パート看護師D | 20時間 | 0.5人分 |
この場合、週あたりの合計勤務時間は120時間となり、常勤の所定労働時間40時間で割ると常勤換算数は3.0人となります。この事業所は常勤換算2.5人以上の基準を満たしていることになります。
計算上の注意点として、常勤換算数に端数が生じた場合は小数点第2位以下を切り捨てて取り扱うのが一般的です。また、育児休業や介護休業、産前産後休業などで一時的に勤務時間が短くなる職員がいる場合の取り扱いについては、厚生労働省の通知やQ&Aで個別に示されていることがあるため、該当するケースが生じた際は最新の通知を確認することが重要です。
管理者の要件
訪問看護ステーションには管理者を置く必要があり、次の要件があります。
- 管理者は常勤の保健師又は看護師であること
- 原則として専従であること(管理業務に支障がない場合は、同一事業所内の他の職務との兼務や、サテライト事業所の管理者を兼務することが認められる場合がある)
管理者を看護職員の人員数である2.5人の中に含めてカウントできるかどうかは、管理者が訪問看護の提供に実際に従事している時間数に応じて判断されます。管理業務に専従していて訪問看護の提供にほとんど従事していない場合は、その時間分は常勤換算の計算に含めることができません。ここを誤解していると、実際には基準を満たしていないのに満たしていると思い込んでしまうケースがあるため注意が必要です。
運営基準における他の人員要件
人員基準は看護職員の数だけでなく、運営基準全体と合わせて理解しておく必要があります。主な関連項目は次の通りです。
- 看護職員のうち1人は常勤であること
- 管理者は原則として専従であること
- 理学療法士等を配置する場合は、訪問看護の提供に支障がない範囲で実情に応じた人数とすること
- サービス提供にあたる職員の資格要件や研修歴の記録を整備しておくこと
これらは指定申請時の添付書類や実地指導の際に必ず確認される項目です。人員基準台帳や勤務表、資格証の写しなどを常に最新の状態で整理しておくことが、実地指導対応の基本になります。
欠員が生じた場合の対応
退職や休職により常勤換算数が一時的に2.5人を下回ることは現実的に起こり得ます。この場合に取るべき対応を整理します。
- 速やかに採用活動や勤務シフトの見直しを行い、基準を満たす体制に戻す
- 欠員が生じた事実と改善計画を、指定権者である都道府県又は市町村に報告する
- 改善が長期間行われない場合は、指定の効力停止や取消の対象となり得るため、猶予を漫然と待たない
- 利用者への訪問看護提供に支障が出る場合は、他事業所との連携や紹介も検討する
欠員が発生した瞬間に即座に指定取消となるわけではありませんが、改善の意思や計画が示されないまま放置されることは行政指導の重大な対象になります。欠員が見込まれる段階、例えば退職の申し出があった時点で早期に採用活動を開始し、常勤換算数が基準を下回る期間をできる限り短くすることが実務上重要です。
人員基準チェックリスト
管理者が定期的に確認しておくべき項目を整理します。
- 看護職員の常勤換算数が2.5人以上を維持できているか
- 常勤職員が1人以上含まれているか
- 管理者が常勤の保健師又は看護師であるか
- 管理者の訪問看護提供時間と管理業務時間の区分が明確になっているか
- 勤務表と実際の出勤記録が一致しているか
- 退職予定者がいる場合、後任の採用計画が立っているか
- 理学療法士等を配置している場合、訪問看護の提供時間が適切に記録されているか
- 人員基準に関する記録を実地指導に備えて整備しているか
まとめ
訪問看護ステーションの人員基準は、看護職員の常勤換算2.5人以上という数字だけを覚えていても不十分です。常勤換算の計算方法、管理者の要件、欠員発生時の対応まで理解しておくことで、日々の勤務シフト管理や採用計画に基準の考え方を反映させることができます。特に常勤換算数は職員の退職や勤務時間変更によって日々変動するため、月次で確認する仕組みを作っておくことが、指定取消リスクを避けるための実務上のポイントです。
出典
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について(老企第36号)厚生労働省
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム 訪問看護事業の人員基準関連資料