なぜ5人以下だとオンコールが厳しいのか
厚生労働省の訪問看護ステーション実態調査では、常勤換算看護職員数が5人未満の事業所は全体の半数近くを占めるとされています。小規模ステーションほど、オンコール担当者が固定化しやすく、管理者やベテラン看護師に負担が集中する傾向があります。
人員が少ないほど1人あたりの待機日数が増える構造は単純な算数で説明できます。
| 看護職員数 | 月間待機日数(30日換算) | 1人あたり月間待機日数 |
|---|---|---|
| 2人 | 30日 | 約15日 |
| 3人 | 30日 | 約10日 |
| 5人 | 30日 | 約6日 |
| 8人 | 30日 | 約4日 |
月10日を超える待機は、平日勤務と重なることも多く、実質的に休みなく緊張状態が続くことになります。これがオンコール担当の離職やバーンアウトの主要因のひとつです。
何人からオンコール体制は無理なく組めるのか
結論から言うと、看護職員2人では持続的な体制構築は困難です。3人でようやく最低限のローテーションが成立し、5人前後で初めて交代制と休息確保の両立が見えてきます。
1人体制の場合
管理者1人が実質専任で担う形です。制度上は届出可能ですが、次のいずれかの補完策がないと長期継続は困難です。
- 近隣の訪問看護ステーションと相互バックアップ契約を結ぶ
- オンコール代行サービスで一次受電のみ委託する
- 主治医・嘱託医との連携で医療的判断の一部を分担する
2人体制の場合
週単位で完全交代する方式が現実的です。隔週で丸ごと担当を入れ替えることで、担当外の週は精神的にも完全にオフにできます。日替わりの交代は引き継ぎの手間が増え、かえって負担が高まる傾向があります。
3〜5人体制の場合
以下のようなローテーション表が組みやすくなります。
| 曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 担当A | 待機 | 待機 | |||||
| 担当B | 待機 | 待機 | |||||
| 担当C | 待機 | 待機 |
休日を1人に集中させず、平日と週末を分散させることで公平感が保たれます。管理者は月次で待機回数の偏りをチェックし、翌月で調整する運用が望ましいです。
外部委託はどこまで使えるのか
オンコール代行サービスは、一次受電と利用者・家族への一次対応(緊急度の聞き取り、落ち着かせる対応)までを担い、実際の訪問要否判断は自ステーションの看護師に引き継ぐ形が一般的です。
費用感は月額固定で5万円から15万円程度、コール件数に応じた従量課金を組み合わせるプランもあります。小規模ステーションが検討する際のチェックポイントは以下の通りです。
- 看護師資格保有者が一次受電を担当しているか
- 緊急時のエスカレーションフローが明文化されているか
- 個人情報の取り扱いが訪問看護記録システムと連携できるか
- 契約解除時の引き継ぎ期間が明記されているか
- 深夜帯のみ、休日のみなど部分委託が可能か
全時間帯を委託するのではなく、担当者の休息日や有給取得日だけをスポットで委託する使い方が、コストと負担軽減のバランスが取りやすい方法です。
加算算定との整合はどう考えるか
24時間対応体制加算や緊急時訪問看護加算は、24時間連絡できる体制と、必要に応じて訪問できる体制の両方が要件になります。外部委託や近隣連携を組み合わせる場合でも、最終的な訪問対応は自ステーションの看護師が行う必要がある点は変わりません。
体制図や業務手順書には、委託先の役割範囲を明記し、実地指導の際に説明できるようにしておくことが重要です。委託先任せにして自ステーションの記録が空白になっていると、指摘対象になりやすいので注意が必要です。
今日から着手できる3つの施策
- 待機当番表を月次で作成し、1人あたりの待機日数を可視化する
- オンコール手当の基準を明文化し、待機分と呼び出し対応分を分けて支給する
- 呼び出し実績を記録し、月次で振り返り、頻度の高い利用者には日中訪問回数の見直しを検討する
呼び出しが頻発する利用者は、特別管理加算の対象状態変化や、主治医への状態報告のタイミングが遅れているケースが少なくありません。日中の訪問計画を見直すことで、夜間コールそのものを減らせる場合があります。
体制構築チェックリスト
- 待機当番表は1か月先まで作成済みか
- 担当者間の待機日数の偏りは月次で是正されているか
- 外部委託を使う場合、委託範囲が契約書で明確か
- 緊急時の連絡フロー図を全スタッフが把握しているか
- オンコール手当の支給基準が就業規則に明記されているか
- 呼び出し実績を月次で集計し、頻発利用者を把握しているか
- 近隣ステーションとのバックアップ契約の有無を検討したか
まとめ
看護職員5人以下のステーションでも、待機と対応を分ける設計、外部委託の部分活用、近隣事業所との連携を組み合わせれば、オンコール体制は無理なく回すことができます。重要なのは1人あたりの負担を数字で可視化し、偏りが生じた時点で早めに手を打つことです。体制の持続可能性は、そのままスタッフの定着率とステーションの経営安定性に直結します。
