訪問看護ステーションに特定行為研修修了者を配置すると、採用力の強化だけでなく診療報酬上の加算算定につながります。令和6年度診療報酬改定で新設された専門管理加算がその核となる制度です。本記事では算定要件と実務上のチェックポイントを整理します。
特定行為研修とはどのような制度か
特定行為研修は、保健師助産師看護師法に基づき、医師の判断を待たずに手順書により一定の診療の補助を行うための研修制度です。対象となる特定行為は21区分38行為に分類されており、呼吸器関連、創傷管理関連、栄養及び水分管理に係るカテーテル関連など、在宅医療で活用しやすい区分が含まれています。
研修は厚生労働大臣が指定する研修機関で実施され、修了者は手順書に基づいて医師の個別指示を都度受けなくても特定の医行為を実施できるようになります。訪問看護の現場では、医師が不在の在宅という環境下で迅速な対応が可能になる点が大きな利点です。
訪問看護で算定できる加算は専門管理加算
特定行為研修修了者を活用した場合に算定できる加算が専門管理加算です。令和6年度診療報酬改定で新設され、介護保険の訪問看護費にも同様の加算が設けられています。
算定できるのは次の2パターンです。
- 緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が、悪性腫瘍の鎮痛療法又は化学療法を行っている利用者に対して計画的な管理を行った場合
- 特定行為研修を修了した看護師が、手順書により特定行為を行った場合
点数は医療保険で月1回2500円、介護保険で月1回250単位です。どちらも月1回を限度とし、同一月に両方の要件を満たしても算定は1回のみです。
専門管理加算の算定要件チェックリスト
算定にあたっては次の点を確認してください。
- 特定行為研修を修了していることを証明する修了証を保管しているか
- 主治医との間で手順書を取り交わし、対象となる特定行為の範囲を明確にしているか
- 手順書に基づく特定行為の実施内容を訪問看護記録書に記載しているか
- 計画的な管理の内容を訪問看護計画書に反映しているか
- 主治医への実施報告を定期的に行っているか
- 同一月内の算定が1回に収まっているか
記録の不備は算定の取り下げや返戻の原因になりやすいため、手順書と記録の整合性を定期的に確認する体制が必要です。
医療保険と介護保険で何が違うか
利用者が医療保険の対象か介護保険の対象かによって、適用される算定区分が異なります。末期の悪性腫瘍など医療保険が優先される利用者では訪問看護管理療養費の専門管理加算、要介護認定を受けている利用者では訪問看護費の専門管理加算として算定します。点数と単位の違いはありますが、要件自体は共通しています。利用者ごとにどちらの保険が適用されるかを事前に確認し、算定区分を誤らないようにすることが重要です。
特定行為研修修了者を活用するメリットは加算だけではない
専門管理加算の算定額自体は事業所全体の収益に対して大きな割合を占めるものではありません。それでも特定行為研修修了者の活用には次のような副次的な効果があります。
- 医師への連絡や指示待ちの時間が減り、利用者への対応スピードが上がる
- 手順書による対応範囲が広がることで、夜間休日の緊急訪問時にも一定の医行為が可能になる
- 採用活動において、キャリアアップの機会を提示できる
- 利用者や家族、ケアマネジャーに対して専門性をアピールできる
特定行為研修の受講には時間と費用がかかりますが、長期的な人材育成の一環として計画的に進める価値があります。
算定時によくある誤りと注意点
専門管理加算は新設から日が浅い加算であるため、算定漏れや要件の誤解が起こりやすい項目です。特に次の点に注意してください。
- 手順書を作成していない、または主治医の署名がないまま運用している
- 特定行為を実施した記録はあるが、計画的な管理としての位置づけが計画書に反映されていない
- 専門の研修を受けた看護師による加算と特定行為研修修了者による加算を混同し、要件の異なる書類を準備してしまう
実地指導では手順書と記録の突合が行われるため、日頃から書類の整合性を保っておくことが算定漏れや返戻を防ぐ最も確実な方法です。
まとめ
特定行為研修修了者の活用で算定できる加算は専門管理加算であり、医療保険で月1回2500円、介護保険で月1回250単位が算定できます。算定には手順書の整備と記録の一貫性が欠かせません。加算額そのものは大きくありませんが、対応範囲の拡大や採用力強化といった副次的な効果を踏まえ、人材育成の一環として検討する価値がある制度です。
出典
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
- 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html