この記事でわかること

  • 基本ルールの要点と実務対応
  • 判断フローチャートの要点と実務対応
  • 厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)の要点と実務対応
  • 特別訪問看護指示書が出た場合の要点と実務対応
  • 精神科訪問看護の場合の要点と実務対応

はじめに:保険種別の判断ミスは返戻の最大要因

「この利用者は医療保険?介護保険?」——訪問看護の請求で最も多い返戻要因の一つが、保険種別の判断ミスです。

特に、要介護認定を受けている利用者が厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合や、特別訪問看護指示書が発行された場合など、例外ルールが複雑で混乱を招きます。

本記事では、保険種別の判断をフローチャート形式で整理し、現場で迷わないための実用ガイドを提供します。


基本ルール

基本ルールについて、実務で押さえるべきポイントを解説します。

原則

条件適用保険
要介護認定あり(要支援1〜要介護5)介護保険
要介護認定なし医療保険
40歳未満医療保険(介護保険の被保険者でないため)

例外(要介護認定ありでも医療保険になるケース)

  1. 厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合
  2. 特別訪問看護指示書が交付された期間
  3. 精神科訪問看護(精神科訪問看護基本療養費)
  4. 認知症対応型共同生活介護を受けている場合の一部

判断フローチャート

判断フローチャートについて、実務で押さえるべきポイントを解説します。

[利用者の年齢は?]

    ├─ 40歳未満 → 【医療保険】

    ├─ 40〜64歳 → [16特定疾病に該当?]
    │                ├─ はい → [要介護認定あり?]
    │                │          ├─ はい → 下記フローへ
    │                │          └─ なし → 【医療保険】
    │                └─ いいえ → 【医療保険】

    └─ 65歳以上 → [要介護認定あり?]
                    ├─ なし → 【医療保険】
                    └─ あり → [厚労大臣が定める疾病等に該当?]
                                ├─ はい → 【医療保険】★例外
                                └─ いいえ → [特別訪問看護指示書あり?]
                                              ├─ はい → 指示期間中は【医療保険】★例外
                                              └─ いいえ → [精神科訪問看護指示書あり?]
                                                          ├─ はい → 【医療保険】★例外
                                                          └─ いいえ → 【介護保険】

厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)

以下に該当する利用者は、要介護認定があっても医療保険で訪問看護を受けます。

疾病
末期の悪性腫瘍
多発性硬化症
重症筋無力症
スモン
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
脊髄小脳変性症
ハンチントン病
進行性筋ジストロフィー症
パーキンソン病関連疾患(ヤールIII以上かつBIが80点以下)
多系統萎縮症
プリオン病
亜急性硬化性全脳炎
ライソゾーム病
副腎白質ジストロフィー
脊髄性筋萎縮症
球脊髄性筋萎縮症
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
後天性免疫不全症候群(AIDS)
頸髄損傷
人工呼吸器を使用している状態

注意:「パーキンソン病」だけでは該当しません。ヤールIII以上かつバーセルインデックス80点以下という条件があります。


特別訪問看護指示書が出た場合

特別訪問看護指示書が出た場合について、実務で押さえるべきポイントを解説します。

ルール

  • 主治医が急性増悪、終末期、退院直後等の理由で特別訪問看護指示書を交付
  • 有効期間は14日間
  • この期間は、要介護認定があっても医療保険で訪問看護を実施
  • 月に原則1回(気管カニューレ・真皮を越える褥瘡の場合は月2回まで)

医療保険に切り替わる期間の注意

  • 特別指示書の期間中、介護保険の訪問看護は停止
  • ケアマネジャーへの連絡が必須
  • 居宅サービス計画の一時変更が必要

精神科訪問看護の場合

精神科訪問看護指示書に基づく訪問看護は、要介護認定の有無にかかわらず医療保険で算定します。

条件適用保険
精神科訪問看護指示書あり医療保険(精神科訪問看護基本療養費)
同じ利用者に一般の訪問看護も行う場合身体ケアは介護保険、精神科ケアは医療保険(保険の使い分け)

よくある判断ミスと対策

よくある判断ミスと対策について、実務で押さえるべきポイントを解説します。

ミス1:末期がんなのに介護保険で算定

正しくは:末期の悪性腫瘍は「厚労大臣が定める疾病等」に該当→医療保険

対策:がんの診断がある利用者は、医師に「末期」の判断を確認する

ミス2:パーキンソン病→即座に医療保険と判断

正しくは:パーキンソン病関連疾患でヤールIII以上かつBI80点以下の場合のみ医療保険

対策:ヤール分類とバーセルインデックスを主治医に確認

ミス3:特別指示書期間中に介護保険で請求

正しくは:特別訪問看護指示書が出ている14日間は医療保険

対策:特別指示書の発行日・有効期限を台帳で管理。期間中は請求を医療保険に切り替え

ミス4:精神科と一般の訪問看護を同じ保険で請求

正しくは:精神科訪問看護は医療保険、身体ケアの訪問看護は介護保険(併用可能)

対策:訪問ごとに「精神科ケアの訪問」か「身体ケアの訪問」かを明確に区分


保険種別管理のための実務ツール

保険種別管理のための実務ツールについて、実務で押さえるべきポイントを解説します。

利用者台帳に記載すべき情報

項目記載内容
要介護認定有無、要介護度、有効期間
厚労大臣が定める疾病等該当の有無、具体的な疾病名
適用保険医療保険 or 介護保険
精神科訪問看護指示書有無、有効期間
特別訪問看護指示書発行の有無、発行日、有効期間

月次チェック

  • 新規利用者の保険種別判断は正しいか
  • 特別訪問看護指示書の有効期間は正確に管理されているか
  • 厚労大臣が定める疾病等に新たに該当した利用者はいないか
  • 介護保険と医療保険の請求が混在していないか

まとめ

判断のポイント結論
要介護認定あり+厚労大臣が定める疾病等医療保険
要介護認定あり+特別訪問看護指示書期間医療保険
要介護認定あり+精神科訪問看護医療保険
要介護認定あり+上記以外介護保険
要介護認定なし医療保険

フローチャートを事務所に掲示し、スタッフ全員が参照できるようにしておくことをお勧めします。