この記事でわかること

  • 訪問看護遠隔診療補助料の概要の要点と実務対応
  • 算定要件の詳細の要点と実務対応
  • 記録の要件の要点と実務対応
  • 医師側で算定できる報酬の要点と実務対応
  • 収益シミュレーションの要点と実務対応

はじめに:訪問看護に新しい収益源が生まれた

2026年(令和8年)診療報酬改定で、訪問看護ステーションに初めてオンライン診療関連の報酬が設定されました。

訪問看護遠隔診療補助料:2,650円/日(月1回)

これは、訪問看護師がD to P with N(Doctor to Patient with Nurse)の補助を行った場合に、訪問看護ステーションが算定できる新しい報酬です。

「そもそもD to P with Nとは何か」「どうすれば算定できるのか」「実務上の注意点は何か」を、本記事で徹底解説します。


訪問看護遠隔診療補助料の概要

訪問看護遠隔診療補助料の概要について、実務で押さえるべきポイントを解説します。

基本情報

項目内容
正式名称訪問看護遠隔診療補助料(07)
金額2,650円/日
算定回数同一利用者につき月1回
算定者訪問看護ステーション
新設時期令和8年(2026年)4月

医療機関版との対比

同様の報酬が医療機関にも設定されています。

項目訪問看護ステーション版医療機関版
名称訪問看護遠隔診療補助料C005-1-3 訪問看護遠隔診療補助料
金額2,650円/日265点/日
算定者訪問看護ステーション医療機関
訪問する看護師ステーションの看護師医療機関の看護師
併算定制限訪問看護基本療養費等と不可C005等と不可

算定要件の詳細

算定要件の詳細について、実務で押さえるべきポイントを解説します。

要件1:訪問看護指示書を受けていること

  • 主治医から有効な訪問看護指示書を受けている利用者が対象
  • 指示書の有効期間内であることが必要
  • 指示書なしの場合は、医療機関版(C005-1-3)で算定し、STと費用分配する

要件2:定期訪問「以外」であること

  • 訪問看護計画に基づく定期的な訪問看護とは別に、D to P with Nの補助のために訪問する場合に算定
  • 定期訪問中にD to P with Nを実施した場合は、通常の訪問看護療養費を算定(遠隔診療補助料は算定しない)

実務上の判断基準:

  • 「いつもの訪問中に、たまたま医師に相談した」→ 通常の訪問看護療養費
  • 「D to P with Nのために、定期訪問とは別に訪問した」→ 訪問看護遠隔診療補助料

要件3:医師が「必要」と判断していること

  • 医師が「看護師等が患者と同席の下でオンライン診療を行う必要がある」と判断していること
  • 診療「前」に医師と看護師の間で相談(事前打合せ)が行われていること
  • 訪問の必要性をレセプト摘要欄に記載

要件4:オンライン診療指針に沿った実施

  • 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に従って実施すること
  • 医師は適切な場所からオンライン診療を行うこと
  • 通信の安全性の確保(暗号化等)

要件5:同一日の併算定制限

以下との同一日算定は不可:

  • 訪問看護基本療養費
  • 精神科訪問看護基本療養費
  • 訪問看護管理療養費

つまり、遠隔診療補助料を算定する日は、D to P with Nの補助に特化した訪問として位置づける必要があります。

要件6:1利用者1ステーション

  • 同一利用者につき、1つのステーションのみが算定可能
  • 医療機関がC005-1-3を算定した場合、STは算定不可(二重算定の防止)

記録の要件

訪問看護記録書に以下を記載する必要があります。

  1. D to P with Nの実施日時(開始時刻・終了時刻)
  2. 実施内容:医師からの指示内容、実施した検査・処置等
  3. 対応状況:利用者の状態変化、医師の判断、家族への説明内容
  4. 連携した医師名・医療機関名
  5. 事前相談の内容:D to P with N実施前の医師との打合せ内容

医師側で算定できる報酬

D to P with Nで医師が算定できる報酬を整理します。訪問看護STにとっては「連携する医師にどんなメリットがあるか」を理解する材料になります。

診療料

報酬名金額条件
オンライン初診料253点初めてのD to P with N
オンライン再診料75点2回目以降
在宅時医学総合管理料各種月2回以上の訪問診療(オンライン含む)

D to P with N関連の加算(新設)

報酬名金額条件
看護師等遠隔診療検査実施料(1種類)100点看護師が検査を実施
看護師等遠隔診療検査実施料(2種類以上)150点看護師が2種類以上の検査を実施
看護師等遠隔診療注射実施料100点看護師が注射を実施
看護師等遠隔診療処置実施料(1種類)100点看護師が処置を実施
看護師等遠隔診療処置実施料(2種類以上)150点看護師が2種類以上の処置を実施
遠隔電子処方箋活用加算10点電子処方箋で重複投薬チェック後に処方

医師にとってのメリット

  • オンライン診療料+各種実施料で1件あたり350〜560点(3,500〜5,600円)程度の報酬
  • 移動なしで在宅患者の診察が可能
  • 看護師が「手と目」として現場にいるため、対面に近い診療が可能

収益シミュレーション

収益シミュレーションについて、実務で押さえるべきポイントを解説します。

ステーション側

利用者数月額年額
5名13,250円159,000円
10名26,500円318,000円
20名53,000円636,000円

遠隔診療補助料だけでは大きな収益にはなりませんが、精神科利用者の新規受け入れやD to P with Nによる医師連携のアピールによる営業効果を含めると、ステーション全体の収益向上に貢献します。

連携医療機関側(参考)

利用者数月額(概算)
10名(検査・処置込み)約40,000〜60,000円
30名約120,000〜180,000円

導入ロードマップ

導入ロードマップについて、実務で押さえるべきポイントを解説します。

Month 1:準備

  • D to P with Nの制度理解(本記事+厚労省通知の確認)
  • 連携する医療機関(オンライン診療に対応したクリニック等)を探索
  • ICT環境の整備(タブレット、通信、オンライン診療アプリ)

Month 2:体制構築

  • 連携医療機関との協定締結(費用分配のルール含む)
  • 利用者への説明資料の作成
  • スタッフ向け研修(SBAR報告法、タブレット操作、算定要件)
  • 記録テンプレートの作成

Month 3:試行運用

  • 対象利用者を2〜3名選定し試行開始
  • 接続テスト(通信品質、音声・映像の確認)
  • 初回のD to P with Nを実施、記録を作成
  • 請求処理の確認(レセプトのコード、摘要欄記載)

Month 4以降:本格運用

  • 対象利用者を段階的に拡大
  • 月次で利用状況・収益・スタッフフィードバックを確認
  • 精神科・皮膚科等の専門領域での活用を検討

よくある間違いと注意点

よくある間違いと注意点について、実務で押さえるべきポイントを解説します。

間違い1:定期訪問中のD to P with Nで遠隔診療補助料を算定

正しくは:定期訪問中にD to P with Nを実施した場合は、通常の訪問看護療養費を算定。遠隔診療補助料は「定期訪問以外」で算定。

間違い2:医療機関版と二重算定

正しくは:同一利用者に対して、医療機関のC005-1-3とSTの訪問看護遠隔診療補助料は併算定不可。どちらが算定するかを事前に取り決める。

間違い3:月2回以上算定

正しくは:同一利用者につき月1回限り。

間違い4:訪問看護基本療養費と同日算定

正しくは:同一日に訪問看護基本療養費、精神科訪問看護基本療養費、訪問看護管理療養費との併算定は不可。

間違い5:事前相談なしの実施

正しくは:D to P with N実施前に医師と事前相談を行い、訪問の必要性を確認する必要がある。突発的な「ついでにオンライン診療」は要件を満たさない可能性。


まとめ

ポイント内容
報酬2,650円/日(月1回)
算定者訪問看護ステーション
対象指示書あり+定期訪問以外のD to P with N補助
併算定基本療養費等と同日不可
記録日時・内容・対応状況・医師名を記載
最大の価値報酬そのものより、D to P with N導入のきっかけ+医師連携体制のアピール

訪問看護遠隔診療補助料は、訪問看護ステーションがD to P with Nの世界に踏み出す最初の一歩です。報酬額だけを見れば小さく見えるかもしれませんが、医師連携体制の構築は、ステーションの採用力・営業力・ケアの質を根本から変えるポテンシャルを秘めています。