この記事でわかること
- パターンA:定期訪問中のオンデマンドD to P with Nの要点と実務対応
- パターンB:単独D to P with N訪問の要点と実務対応
- パターンC:夜間オンコール時のD to P with Nの要点と実務対応
- 3パターンの導入優先順位の要点と実務対応
- 連携医療機関の見つけ方の要点と実務対応
はじめに:D to P with Nは「3つの使い方」がある
2026年(令和8年)診療報酬改定で本格評価されたD to P with N。訪問看護師が利用者宅にいる状態で、医師がオンラインで診療を行うこの仕組みには、3つの異なる活用パターンがあります。
それぞれ算定できる報酬が異なり、導入のハードルも違います。自ステーションにとって最も始めやすいパターンから着手することが成功の鍵です。
パターンA:定期訪問中のオンデマンドD to P with N
パターンA:定期訪問中のオンデマンドD to P with Nについて、実務で押さえるべきポイントを解説します。
概要
通常の訪問看護の最中に、「今、医師に相談したい」と判断した場合に、その場で医師にオンライン接続するパターンです。
[通常の訪問看護を実施中]
↓ 「あれ、この状態は医師に見てもらいたい」
[タブレットで連携医師にビデオ接続]
↓
[医師が映像で確認、指示を出す]
↓
[看護師が対応、訪問を継続]
算定
| 算定者 | 報酬 |
|---|---|
| 訪問看護ST | 通常の訪問看護療養費(変更なし) |
| 医師 | オンライン診療料+検査/処置実施料 |
ポイント:STの算定は従来通り。追加の届出・手続きは不要。最も始めやすいパターン。
適したシーン
- 褥瘡の悪化を訪問中に発見 → 皮膚科医にオンラインで見てもらう
- バイタルの異常値が出た → 主治医に相談して方針を確認
- 精神状態の変化が気になる → 精神科医に評価してもらう
- 家族から「先生に聞きたいことがある」と言われた → 医師に接続
導入のポイント
- 事前の取り決め:連携医師と「訪問中にいつでも接続してよい」時間帯を合意
- 接続手段:オンライン診療アプリ or ビデオ通話ツール
- 看護師のスキル:SBAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation)で効率よく情報を伝える
- 頻度の目安:月に数回程度。日常的に使えるようにハードルを下げておく
メリット
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 導入ハードル最低 | 既存の訪問看護の延長。届出変更不要 |
| 看護師の安心感 | 「いつでも医師に繋がれる」だけで心理的負担が激減 |
| ケアの質向上 | リアルタイムの医師判断で対応の精度が上がる |
| 追加コスト最小 | タブレットと通信環境のみ |
パターンB:単独D to P with N訪問
パターンB:単独D to P with N訪問について、実務で押さえるべきポイントを解説します。
概要
定期訪問とは別の日・別の枠で、D to P with Nの補助を目的とした訪問を行うパターンです。このパターンでのみ、訪問看護ステーションは訪問看護遠隔診療補助料2,650円/月を算定できます。
[医師と事前相談:「この利用者にオンライン診察が必要」]
↓
[看護師がD to P with N専用訪問として利用者宅を訪問]
↓
[タブレットで医師と接続]
↓
[看護師がバイタル測定・状態報告]
↓
[医師がオンライン診察、検査・処置を指示]
↓
[看護師が実施、記録]
算定
| 算定者 | 報酬 |
|---|---|
| 訪問看護ST | 訪問看護遠隔診療補助料 2,650円/月1回 |
| 医師 | オンライン診療料+検査/処置/注射実施料+遠隔電子処方箋活用加算 |
注意:同一日に訪問看護基本療養費等との併算定は不可。この日は「D to P with N専用」の訪問。
算定の5つの条件
- 主治医から有効な訪問看護指示書を受けていること
- 定期訪問計画以外の訪問であること
- 医師が「D to P with Nが必要」と判断し、事前相談を実施していること
- 同一利用者につき月1回まで
- 訪問看護記録書に日時・内容・対応状況を記載
適したシーン
- 精神科の定期診察代替:精神科医不足地域で、月1回の精神科オンライン診察を看護師同席で実施
- 褥瘡の専門医評価:月1回、皮膚科医にオンラインで褥瘡の治療方針を確認
- 緩和ケアの症状コントロール:疼痛管理の調整を緩和ケア医とオンラインで実施
- 小児の専門医フォロー:医療的ケア児の状態を小児科専門医が月1回オンラインでチェック
導入のポイント
- 連携医療機関との費用分配ルールを事前に合意(合議の上で精算が必要)
- 利用者への説明と同意を取得(オンライン診療を受けることへの同意)
- レセプト摘要欄に訪問の必要性を記載
- 定期訪問との日程調整(同一日は不可)
収益シミュレーション
| 対象利用者数 | ST月額 | ST年額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 5名 | 13,250円 | 159,000円 | 精神科5名を想定 |
| 10名 | 26,500円 | 318,000円 | 精神科+皮膚科 |
| 20名 | 53,000円 | 636,000円 | 複数診療科連携 |
パターンC:夜間オンコール時のD to P with N
パターンC:夜間オンコール時のD to P with Nについて、実務で押さえるべきポイントを解説します。
概要
夜間のオンコール対応で緊急訪問した際に、その場で医師にオンライン接続するパターンです。看護師の判断支援として最も価値が高い活用法です。
[夜間:利用者家族からオンコール電話]
↓
[看護師が電話トリアージ → 出動が必要と判断]
↓
[看護師が利用者宅に到着]
↓
[状態を評価、判断に迷う]
↓
[タブレットで連携医師にビデオ接続] ★D to P with N
↓
[医師が診察・判断:在宅対応 or 処方変更 or 救急搬送]
↓
[看護師が対応、家族に説明]
算定
| 算定者 | 報酬 |
|---|---|
| 訪問看護ST | 緊急訪問の通常算定(緊急時訪問看護加算+所定単位数) |
| 医師 | オンライン診療料(夜間・深夜加算が適用される場合あり) |
ポイント:STは緊急訪問の通常算定を行う。D to P with N自体による追加算定はないが、看護師の判断支援+不要な救急搬送回避に大きな価値。
適したシーン
- 看取り期の急変:呼吸状態の変化が自然経過か急変かの判断
- 転倒後の評価:骨折の可能性の判断、救急搬送の要否
- 高熱の対応:敗血症の可能性の評価、抗生剤の処方
- 精神科の危機介入:自傷行為のリスク評価、精神科緊急受診の要否
なぜパターンCが「オンコール代行」に代わる解決策なのか
| 比較項目 | オンコール代行 | パターンC(夜間D to P with N) |
|---|---|---|
| 利用者の一次連絡先 | 外部 → 制度上不可 | ステーション看護師 → OK |
| 看護師の負担軽減 | 電話を代わりに受ける | 判断を医師と共有 |
| 制度的リスク | 加算要件を満たさないリスク | 正規の診療行為 |
| 看護師が得るもの | 「電話を取らなくてよい」 | 「一人で判断しなくてよい」 |
核心:オンコールの本当の苦しさは「電話を取ること」ではなく「判断の孤独」。パターンCはこの核心に直接アプローチする。
3パターンの導入優先順位
3パターンの導入優先順位について、実務で押さえるべきポイントを解説します。
推奨ステップ
Step 1:パターンA(定期訪問中のオンデマンド)
↓ 小さく始めて運用を慣らす
Step 2:パターンC(夜間オンコール時)
↓ 看護師の判断支援体制を構築
Step 3:パターンB(単独D to P with N訪問)
↓ 新しい収益源として本格運用
パターン別の比較一覧
| 項目 | A:定期訪問中 | B:単独訪問 | C:夜間緊急 |
|---|---|---|---|
| STの追加算定 | なし | 2,650円/月 | なし |
| 導入ハードル | 低 | 中 | 中〜高 |
| 届出・手続き | 不要 | 記録・請求の整備 | 不要 |
| 看護師のメリット | 日中の安心感 | 専門医アクセス | 夜間の判断支援 |
| 経営メリット | ケアの質向上 | 新規収益 | 離職防止・採用力 |
| 優先度 | 最初に始める | 3番目 | 2番目 |
連携医療機関の見つけ方
連携医療機関の見つけ方について、実務で押さえるべきポイントを解説します。
候補1:主治医(在宅医)
- 利用者のことを最もよく知っている
- 日中のパターンAから始めやすい
- 課題:夜間対応を引き受けてくれるかは医師次第
候補2:在宅療養支援診療所
- 24時間往診体制がすでにある
- 夜間のパターンCに対応しやすい
- 課題:利用者情報の事前共有が必要
候補3:オンライン診療に特化したクリニック
- 24時間対応可能な医師シフト体制を持つところもある
- 複数の診療科に対応できる場合がある
- 課題:利用者との関係構築が必要
候補4:精神科・皮膚科等の専門クリニック
- パターンBでの専門領域D to P with Nに最適
- 精神科医不足地域では特に価値が高い
- 課題:オンライン診療に対応しているクリニックの探索
交渉のポイント
- D to P with Nの医師側の算定メリット(オンライン診療料+実施料)を伝える
- 「移動なしで在宅患者の診察ができる」ことを強調
- まずは1〜2名の利用者で試行することを提案
- 費用分配のルール(訪問看護遠隔診療補助料の精算方法)を明確にする
実際の運用で気をつけること
実際の運用で気をつけることについて、実務で押さえるべきポイントを解説します。
通信トラブルへの備え
- Wi-Fiが使えない利用者宅もある → モバイル回線を必ず確保
- 電波が弱い地域 → 事前に接続テストを実施
- 接続できない場合の代替手段 → 電話での口頭報告+写真共有
利用者・家族への説明
- 「画面越しに先生が診てくれます」というわかりやすい説明
- 同意書の取得(オンライン診療についての説明と同意)
- 高齢者の場合、「先生の顔が見える」ことでむしろ安心する方も多い
記録の徹底
- D to P with Nの実施日時(開始・終了)
- 医師からの指示内容
- 実施した検査・処置
- 利用者・家族への説明内容
- パターンBの場合:事前相談の内容、レセプト摘要欄への記載
まとめ
| パターン | 一言で言うと | まず何から |
|---|---|---|
| A:定期訪問中 | 「困ったら繋ぐ」 | タブレットと連携医師を確保するだけ |
| B:単独訪問 | 「専門医に診てもらう」 | 精神科・皮膚科等の連携先を開拓 |
| C:夜間緊急 | 「一人で判断しない」 | 夜間対応可能な医師を確保 |
D to P with Nは、訪問看護の「医師に相談しにくい」「一人で判断しなければならない」という構造的な課題を解決する、2026年改定最大の武器です。まずはパターンAから小さく始め、段階的に活用範囲を広げていくことをお勧めします。
