長時間訪問看護加算は、通常の訪問時間を超えて長時間のケアを必要とする利用者に対応した場合に算定できる加算です。ただし誰にでも算定できるわけではなく、医療保険と介護保険で対象者の考え方と算定回数の上限が異なります。この違いを正しく理解していないと、算定漏れや誤請求につながりやすい加算のひとつです。本記事では一次資料で確認できる範囲で、医療保険と介護保険それぞれの対象者要件と算定上限を整理します。
長時間訪問看護加算とはどんな加算か
長時間訪問看護加算は、通常の訪問看護の提供時間を超えて長時間にわたる訪問看護を必要とする利用者に対し、一定時間以上のケアを行った場合に算定できる加算です。対象となるのは、医療処置や管理の負担が大きく、短時間の訪問では対応が難しい利用者です。医療保険の訪問看護療養費、介護保険の訪問看護費のいずれにも設けられていますが、算定の仕組みは別々に定められています。同じ名称の加算であっても、保険の種類によって対象者要件と算定上限が違う点を押さえておく必要があります。
医療保険における対象者要件
医療保険の長時間訪問看護加算は、次のいずれかに該当する利用者に対して訪問看護を行った場合に算定できます。
- 特別管理加算の対象となる状態にある利用者(特掲診療料の施設基準等に定める状態、いわゆる別表第八に該当する利用者)
- 15歳未満の超重症児または準超重症児
- 特別訪問看護指示書の交付を受けている利用者
特別管理加算の対象となる状態には、在宅悪性腫瘍患者、気管切開を行っている状態、気管カニューレを使用している状態、留置カテーテルを使用している状態、人工肛門または人工膀胱を造設している状態、真皮を越える褥瘡の状態、在宅酸素療法を行っている状態、在宅中心静脈栄養法を行っている状態、在宅人工呼吸療法を行っている状態などが含まれます。これらに該当するかどうかは、主治医の指示書や診療情報提供書の記載内容と照らし合わせて確認することが基本になります。
医療保険における算定上限の考え方
医療保険の長時間訪問看護加算は、原則として週1回を限度に算定します。ここで注意したいのが、超重症児・準超重症児の取り扱いです。15歳未満の超重症児または準超重症児については、週3回まで算定できる取り扱いとなっています。対象者によって上限回数が異なる点を、記録や請求のタイミングで確認する体制が必要です。
また、特別訪問看護指示書が交付されている場合についても整理が必要です。特別訪問看護指示書は、病状の急性増悪などにより頻回の訪問看護が必要と主治医が判断した場合に交付されるもので、原則として交付の日から14日間を限度に、毎日の訪問看護を可能にするものです。気管カニューレを使用している状態や真皮を越える褥瘡の状態にある利用者については、月2回まで交付できる取り扱いがあります。
ここで重要なのは、特別訪問看護指示書によって可能になる訪問看護の回数(毎日の訪問)と、長時間訪問看護加算そのものの算定上限は別のものだという点です。指示書があるからといって、長時間訪問看護加算を毎日算定できるわけではありません。長時間訪問看護加算自体は原則週1回の算定が基本であり、指示書に基づく頻回訪問の中で、長時間のケアが必要な日に限って算定するという整理になります。指示書の訪問回数と加算の算定回数を混同しないよう、請求担当者間で共有しておくことが大切です。
介護保険における対象者要件
介護保険の訪問看護費における長時間訪問看護加算は、90分以上の訪問看護を行った場合に算定できる加算です。対象となるのは、特別管理加算の対象となる状態にある利用者など、厚生労働大臣が定める者に該当する利用者です。介護保険を利用するには要介護認定または要支援認定を受けていることが前提ですが、認定を受けているだけで自動的に対象になるわけではなく、特別な管理を要する状態像に該当しているかどうかが判断の基準になります。
医療保険にある超重症児・準超重症児という区分は、介護保険の訪問看護費には設けられていません。これは介護保険の被保険者が原則として65歳以上(第2号被保険者は特定疾病に該当する40歳以上65歳未満)であり、小児の超重症児・準超重症児は通常医療保険による訪問看護の対象となるためです。この点が医療保険との大きな違いのひとつです。
介護保険における算定上限の考え方
介護保険の長時間訪問看護加算は、1月に3回を限度として算定します。医療保険が週単位で上限を設定しているのに対し、介護保険は月単位で上限が設定されている点が大きな違いです。週1回という感覚で介護保険の請求を組んでしまうと、月の回数を超過して算定してしまう恐れがあるため、月間の算定回数を利用者ごとに管理しておく必要があります。
医療保険と介護保険の違いを一覧で整理する
| 項目 | 医療保険 | 介護保険 |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 特別管理加算の対象者、超重症児・準超重症児、特別訪問看護指示書の交付を受けた者 | 特別管理加算の対象となる状態の利用者 |
| 時間要件 | 加算名称どおり長時間の訪問看護を実施した場合 | 90分以上の訪問看護を実施した場合 |
| 算定上限の単位 | 週単位 | 月単位 |
| 算定上限回数 | 原則週1回(超重症児・準超重症児は週3回まで) | 1月に3回まで |
| 特別訪問看護指示書との関係 | 指示書による頻回訪問の中で、加算自体は原則週1回を限度に算定 | 制度上の関係なし |
算定漏れ・誤請求を防ぐチェックリスト
長時間訪問看護加算は対象者要件と算定上限の双方を同時に満たして初めて算定できる加算です。次の項目を訪問記録や請求前のチェックに組み込むことをおすすめします。
- 利用者が特別管理加算の対象となる状態に該当しているか、指示書等で確認できているか
- 医療保険の場合、超重症児・準超重症児に該当するかどうかを記録で確認しているか
- 特別訪問看護指示書の有効期間と、長時間訪問看護加算の算定日が指示期間内に収まっているか
- 医療保険で週1回(該当者は週3回)の上限を超えて算定していないか
- 介護保険で1月3回の上限を超えて算定していないか
- 介護保険の場合、1回の訪問時間が90分以上であったことが記録(訪問開始・終了時刻)から確認できるか
- 対象者の状態が変化した場合、特別管理加算の対象から外れていないか定期的に見直しているか
特に複数のスタッフが同じ利用者を担当するステーションでは、月間の算定回数の管理が属人化しやすく、誤って上限を超過してしまうケースが起こりえます。利用者ごとの算定実績を一覧化し、サービス提供責任者が月次で確認する運用を整えておくと安心です。
まとめ
長時間訪問看護加算は、医療保険と介護保険で対象者の考え方と算定上限の単位が異なる加算です。医療保険は特別管理加算の対象者、超重症児・準超重症児、特別訪問看護指示書の交付を受けた者を対象に、原則週1回(該当者は週3回まで)を限度に算定します。介護保険は特別管理加算の対象となる状態の利用者を対象に、90分以上の訪問看護を行った場合に1月3回を限度に算定します。どちらの保険で請求する利用者かによって確認すべきポイントが変わるため、対象者要件と算定上限を切り分けて管理することが、算定漏れと誤請求の両方を防ぐ近道になります。
出典
- 厚生労働省 診療報酬点数表(訪問看護療養費)関連通知 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
- 厚生労働省 介護報酬の算定構造に関する資料 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/hosyu/index.html
- 厚生労働省 特別訪問看護指示書及び特別管理加算の対象となる状態等に関する告示・通知 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html