看護体制強化加算とは何か
看護体制強化加算は、介護保険の訪問看護費に設けられている加算です。重度化した利用者や終末期の利用者を積極的に受け入れ、緊急対応や特別な管理を日常的に行っている訪問看護ステーションの体制を評価する目的で設けられています。医療保険の訪問看護療養費には同名の加算は設定されていないため、介護保険の利用者に限って検討する加算であるという点をまず押さえておく必要があります。
経営者・管理者にとっては、算定できれば月単位で安定した増収につながる一方、実績要件を満たせなくなった瞬間に算定を止めなければならないという緊張感のある加算でもあります。要件の中身と判定方法を正しく理解しておくことが欠かせません。
算定要件は何か 3つの実績要件を確認する
看護体制強化加算を算定するには、次の3つの実績要件をすべて満たす必要があります。これは厚生労働省が定める指定居宅サービスの算定基準に示されている内容で、本稿執筆時点(令和6年度介護報酬改定後)の基準です。改定のたびに数値や要件が見直される可能性があるため、算定前には必ず最新の告示を確認してください。
| 要件 | 評価期間 | 基準 |
|---|---|---|
| 緊急時訪問看護加算の算定割合 | 前6か月間 | 利用者総数のうち算定した利用者の割合が50%以上 |
| 特別管理加算の算定割合 | 前6か月間 | 利用者総数のうち算定した利用者の割合が20%以上 |
| ターミナルケア加算の算定実績 | 前12か月間 | 算定した利用者が1名以上 |
この3つはいずれも欠けてはならない要件です。例えば緊急時訪問看護加算の算定率が高くても、ターミナルケア加算の実績が過去12か月で一件もなければ算定要件を満たしません。逆に看取り実績があっても、緊急時訪問看護加算や特別管理加算を算定する利用者の比率が低いステーションでは要件を満たせません。
実績要件の判定に用いる利用者数の数え方(実人数か延べ人数か、どの時点を基準とするか)は、告示や関連通知で定義が決められています。事業所が独自の解釈で計算方法を選べるものではないため、具体的な算出方法は最新の留意事項通知や国民健康保険団体連合会の案内で必ず確認してください。
どの利用者に、いくら加算されるのか
要件を満たした事業所は、訪問看護ステーションの場合、令和6年度介護報酬改定時点で1月につき300単位を算定できます。看護体制強化加算は、特定の疾患や状態を持つ利用者だけに限定される加算ではなく、要件をクリアした事業所が提供する訪問看護に付随して算定される位置づけの加算です。
ただし、月の途中で利用を開始・終了した利用者の扱いや、医療保険の訪問看護と介護保険の訪問看護を併用している期間の扱いなど、個別のケースで算定可否が分かれる場面があります。自己判断で算定の可否を決めるのではなく、国民健康保険団体連合会の請求ルールや保険者の運用通知を確認したうえで算定してください。
要件を満たさなくなった場合は、速やかに加算の算定を中止する必要があります。実績要件は前6か月・前12か月という移動期間で判定されるため、毎月の実績を継続的にモニタリングし、要件を割り込みそうなタイミングを早期に把握する体制が必要です。
緊急時訪問看護加算・特別管理加算との関係
看護体制強化加算は、緊急時訪問看護加算と特別管理加算という2つの加算の算定実績を土台にした仕組みになっています。つまり、看護体制強化加算だけを単独で狙って取りにいくことはできません。
実務上は次の順番で体制を整えることになります。
- 24時間対応が可能な体制を整え、緊急時訪問看護加算の算定対象となる利用者の同意を広げる
- 気管カニューレ使用者や真皮を越える褥瘡のある利用者など、特別管理加算の対象となる利用者の受け入れを増やす
- 看取り期の利用者への対応体制を整え、ターミナルケア加算の実績を積み重ねる
この3つは単独でも収益に直結する加算ですが、組み合わせて実績を積むことで看護体制強化加算という上乗せが得られる構造になっています。重度・終末期対応に力を入れているステーションほど、結果的に看護体制強化加算も取りやすくなるという関係です。
収益インパクトはどう試算すればよいか
看護体制強化加算の月間加算額は、次の考え方で概算できます。
月間加算額(概算)= 300単位 × 1単位の単価 × その月に訪問看護を利用した利用者数(または延べ回数の考え方に応じた算定単位数)
1単位の単価は全国一律10円ではなく、地域区分(1級地から7級地、その他)とサービスごとの人件費割合によって上乗せされます。訪問看護は人件費割合70%の区分に分類されており、地域区分が高い地域ほど1単位あたりの単価は10円よりも高くなります。具体的な単価は改定のたびに見直されるため、必ず自事業所が所在する地域区分の最新単価表で確認してください。
試算にあたっては、次のチェックリストで前提条件を整理すると精度が上がります。
- 直近6か月の緊急時訪問看護加算の算定利用者数と利用者総数
- 直近6か月の特別管理加算の算定利用者数と利用者総数
- 直近12か月のターミナルケア加算の算定実績の有無
- 自事業所が所在する地域区分と1単位あたりの単価
- 加算対象となる見込み利用者の月間延べ人数
これらを押さえたうえで、要件を満たした場合の増収見込みと、要件維持のために必要な体制投資(オンコール体制の強化、重度利用者の受け入れ増など)を比較し、投資対効果を判断することが現実的な進め方になります。
届出から算定開始までの流れ
加算の算定には、保険者(市町村や都道府県)への届出が必要です。一般的な流れは次のとおりです。
- 直近の実績が3つの要件をすべて満たしているか確認する
- 加算に関する体制等状況一覧表など、所定の届出様式を作成する
- 実績を裏付ける利用者一覧や算定記録を整備する
- 保険者が定める受理期限までに届出を提出する
- 届出が受理された月の翌月から算定を開始する
届出の受理期限や算定開始時期の取り扱いは自治体によって運用が異なる場合があるため、所管の自治体または国民健康保険団体連合会に事前に確認することをおすすめします。
よくある算定ミス・返戻パターン
- 評価期間の利用者数の数え方を誤り、要件を満たしていないのに算定してしまう
- 要件を満たさなくなった月以降も算定を継続してしまう
- ターミナルケア加算の実績が12か月を超えて更新されず、気づかずに要件を割り込んでいる
- 届出の受理期限を過ぎてしまい、算定開始が翌々月にずれ込む
- 医療保険と介護保険の利用期間が混在する利用者について、誤って加算を算定してしまう
いずれも、実績要件を月次で継続的にモニタリングし、届出のタイミングを管理することで防げるミスです。算定の可否に迷うケースは、自己判断せず国民健康保険団体連合会や保険者に事前照会する習慣をつけることが、返戻や過誤請求を防ぐ最も確実な方法です。
まとめ
看護体制強化加算は、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算という3つの実績要件をすべて満たすことで算定できる、介護保険の訪問看護費特有の加算です。単位数や判定の細部は改定のたびに見直される可能性があるため、本稿の数値は執筆時点の情報として参照し、算定前には必ず最新の告示や通知を確認してください。重度・終末期対応の体制づくりと実績の継続的なモニタリングが、この加算を安定して算定し続けるための土台になります。
出典
- 厚生労働省 介護報酬改定について(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/housyu/index.html)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html)
- e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411M50000100037)