TL;DR

難病等複数回訪問加算は、特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等の利用者や特別管理加算対象者などに対し、医師が1日に複数回の訪問看護が必要と認めた場合に算定できる加算です。1日2回と3回以上で単位数区分が異なり、算定には医師の指示内容の記録と訪問の必要性の明記が欠かせません。本記事では対象疾患の一覧、算定要件、算定漏れを防ぐチェックリストまで実務目線で整理します。

難病等複数回訪問加算とはどのような加算か

難病等複数回訪問加算は、1日のうちに2回以上の訪問看護を行った場合に算定できる加算です。通常の訪問看護は1日1回の訪問を前提に報酬設計されていますが、症状の重い利用者や医療依存度の高い利用者では、朝夕2回、あるいは日中複数回の医療処置が必要になるケースがあります。こうした利用者に対応するための評価が本加算です。

算定できるのは、次のいずれかに該当する利用者です。

  • 特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等(いわゆる厚生労働大臣が定める疾病等)に該当する利用者
  • 特別管理加算の対象となる状態にある利用者(別表第8該当者)
  • 急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付されている期間中の利用者

いずれの場合も、単に利用者や家族の希望だけでは算定できず、主治医が診療の必要上、複数回の訪問看護が必要と判断していることが前提になります。訪問看護指示書や特別訪問看護指示書に複数回訪問の必要性が明記されているか、指示内容とカルテ記録に整合性があるかが実地指導での確認ポイントになります。

対象疾患はどこまで含まれるか

別表第7に掲げる疾病等は、いわゆる神経難病や重篤な状態にある疾患が中心です。主なものを整理すると次のとおりです。

区分対象疾患の例
神経難病系多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、パーキンソン病関連疾患(ホーエン・ヤール重症度ステージ3以上かつ生活機能障害度II度またはIII度)
進行性疾患進行性筋ジストロフィー症、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー
脊髄性疾患脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、頸髄損傷
その他重篤な状態末期の悪性腫瘍、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、人工呼吸器を使用している状態

この一覧は診療報酬の告示・通知に基づくものであり、改定のたびに文言や対象疾患の範囲が見直される可能性があります。算定前には必ず最新の告示内容を確認し、疑義が生じた場合は地方厚生局への確認や顧問社会保険労務士への相談を行うことが望ましいです。

パーキンソン病関連疾患のように重症度分類の条件が付されている疾患は、単に病名だけでなく重症度のステージや生活機能障害度の判定結果をカルテに残しておく必要があります。この記録が不十分だと、算定要件を満たしていても返戻の対象になりかねません。

算定単位数と回数区分はどうなっているか

複数回訪問加算は、1日の訪問回数に応じて単位数が区分されています。

訪問回数加算の考え方
1日2回訪問2回目の訪問に対して加算を算定
1日3回以上訪問3回目以降の訪問に対して、2回訪問より高い単位数で加算を算定

算定はあくまで1日につき1回のみで、2回訪問した日と3回訪問した日では適用される単位数区分が異なります。訪問記録には各回の訪問時刻と実施した看護内容を明確に残し、複数回訪問が必要であった医学的根拠を記録しておくことが重要です。単位数の具体的な数値は診療報酬改定のたびに見直されるため、算定時には最新の告示を必ず確認してください。

特別管理加算や特別訪問看護指示書との関係はどうなっているか

複数回訪問加算の対象者要件は、特別管理加算や特別訪問看護指示書の対象者と重なる部分があります。整理すると次のようになります。

  • 別表第7該当者は、特別管理加算を算定していなくても複数回訪問加算の対象になり得る
  • 特別管理加算I・IIの対象者(別表第8該当)は、複数回訪問の必要性が医師により認められれば複数回訪問加算も算定できる
  • 急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付されている期間中は、対象疾患に該当しない利用者であっても複数回訪問加算の算定対象になり得る

つまり、通常は月1回までしか交付されない特別訪問看護指示書の期間中であれば、対象疾患に該当しない利用者でも一時的に複数回訪問加算を算定できる点は見落とされがちです。急性増悪時の対応を行った際は、特別訪問看護指示書の交付日と指示内容、実際の訪問回数の対応関係を必ず記録に残しておきましょう。

算定漏れ・返戻を防ぐにはどうすればよいか

複数回訪問加算は算定要件が複数の告示にまたがっているため、算定漏れや逆に不適切な算定による返戻が起きやすい加算です。次のチェックリストで確認することをおすすめします。

算定前チェックリスト

  • 対象者が別表第7の疾病等、特別管理加算対象者、特別訪問看護指示書交付期間中のいずれかに該当するか確認したか
  • 主治医の指示書または特別訪問看護指示書に複数回訪問の必要性が明記されているか確認したか
  • パーキンソン病関連疾患等、重症度分類の条件がある疾患については該当するステージ・障害度をカルテに記録したか
  • 訪問回数(2回か3回以上か)に応じた正しい単位数区分を適用しているか確認したか
  • 各訪問の実施時刻と看護内容を訪問記録に個別に記載しているか
  • 複数回訪問が必要と判断した医学的根拠を記録に残しているか
  • 特別訪問看護指示書期間中の算定については、指示書の交付日と算定期間の整合性を確認したか

これらの項目は、実地指導の際にも確認されやすいポイントです。特に指示書の記載内容と訪問記録の整合性は、書類上の不備として指摘されやすい部分ですので、日頃から指示書受領時に複数回訪問の必要性の記載有無をチェックする運用フローを作っておくと安心です。

精神科訪問看護でも算定できるのか

精神科訪問看護の利用者であっても、別表第7の対象疾患に該当し、かつ医師が複数回訪問の必要性を認めていれば複数回訪問加算の算定対象になり得ます。ただし精神科訪問看護基本療養費の算定体系とは別建ての加算であるため、算定の可否は個々の利用者の状態と指示内容に基づいて判断する必要があります。精神症状の悪化に伴う訪問回数の増加であっても、別表第7に該当しない疾患であれば、特別訪問看護指示書の交付期間中であるかどうかが算定可否を左右します。精神科訪問看護における加算算定の全体像については、精神科訪問看護基本療養費に関する解説も併せて確認しておくとよいでしょう。

まとめ

難病等複数回訪問加算は、別表第7の対象疾患や特別管理加算対象者、特別訪問看護指示書交付期間中の利用者に対し、医師が複数回訪問の必要性を認めた場合に算定できる加算です。対象疾患は神経難病を中心とした重篤な状態が中心であり、重症度分類の条件が付されている疾患もあるため、カルテへの記録精度が算定の可否を左右します。算定単位数は訪問回数に応じて区分されており、特別管理加算や特別訪問看護指示書との関係を正しく理解しておくことが、算定漏れの防止と適正な請求につながります。日々の指示書確認と記録のチェック体制を整え、確実な加算算定につなげていきましょう。