全国平均ではなく、自事業所の数字から始める

「うちのオンコールは多いのか、少ないのか」という問いに、業界平均は答えてくれません。訪問看護のオンコール件数は、利用者の疾患構成、看取り期の利用者の人数、訪問頻度、利用者への説明の仕方、当番に入る看護職員の人数で大きく変わります。条件のそろっていない平均値と比べても、自事業所で何を変えるべきかは出てきません。

加えて、出回っているオンコールの「全国平均」には出典の確認できないものが少なくありません。会議で使う数字は、一次資料にあたれるものか、自事業所で数えたものに限るのが安全です。

自事業所の数字は、外から探すものではなく、来月から取り始めるものです。以下では記録する項目、指標の定義、読み方の順に整理します。

何を記録するか(1コール1行)

記録は1件のコールを1行で残す形にします。紙でも表計算でも構いませんが、後から集計できる形であることが条件です。必要な項目は次のとおりです。

  • 受電日時(日付と時刻。時間帯別に見るため時刻まで残す)
  • 受電者(当番に入っていた看護職員、または一次受けを担当した職員)
  • 利用者(氏名または利用者番号)
  • 主訴の区分(発熱・疼痛・医療機器・排泄・不安・家族からの相談など、あらかじめ決めた選択肢)
  • 対応の区分(電話で完結/翌日の訪問で対応/緊急訪問/救急要請)
  • 所要時間(受電から対応終了まで。緊急訪問は移動時間を含める)
  • 医師へ連絡したかどうか

あわせて、対応しなかった着信も残してください。折り返しの有無や、着信に気づかなかった時間帯は、当番体制を見直すときの材料になります。

記入は対応の直後に行うのが原則です。翌朝まとめて書くと、電話で完結したコールから先に抜けていきます。

毎月出す指標をどう定義するか

指標は数を増やさず、定義を固定して続けることが大切です。最初は次の6つで足ります。

指標定義使いどころ
月間コール件数その月に受けたコールの総数全体量の推移を見る
利用者あたりコール件数月間コール件数 ÷ 月末時点の利用者数利用者数の増減の影響を除く
出動率緊急訪問に至ったコール数 ÷ 月間コール件数電話で完結できている割合を見る
夜間帯比率22時〜6時の受電数 ÷ 月間コール件数睡眠が削られている度合いを見る
一人あたり当番回数当番日数の合計 ÷ 当番に入る看護職員数当番表の偏りを見る
一人あたり受電件数月間コール件数 ÷ 当番に入る看護職員数当番1回の重さを見る

夜間帯の区切りや所要時間の数え方は、事業所ごとに決めて構いません。決めたら変えないことが条件です。定義を途中で変えると、その前後の数字が比較できなくなります。

数字の読み方

比べる相手は自事業所の過去です。前月、3か月前、前年同月の3点に並べ、動いている指標だけを見ます。動いた指標があれば、その月に何が変わったかを探します。利用者の受け入れ、看取り期の利用者の人数、退院直後の利用者の有無、当番に入る人数の変化が主な要因になります。

平均値だけでなく、分布も見てください。次の3つは平均に隠れやすい問題です。

  • 特定の利用者に集中していないか(利用者別のコール件数を出す)
  • 特定の担当者に集中していないか(受電者別の件数と当番回数を出す)
  • 電話で完結したコールの割合が下がっていないか(対応の区分別に割合を出す)

特定の利用者に集中している場合は、当番表ではなく、その利用者と家族への説明や日中のケア計画のほうに手を入れる余地があります。

制度上そもそも必要な記録

記録は改善の材料であると同時に、制度上の要件でもあります。看護師以外が一次受けを行う場合、対応手順のマニュアル整備、看護師への速やかな報告、対応内容の記録、利用者の同意、届出が要件に含まれます。

あわせて、利用者・家族からの電話の一次受けを自事業所以外に経由させることは認められていません。届出の内容と実際の当番体制が一致しているかどうかも、記録から確認できるようにしておいてください。

測ったあとに打てる手

3か月分の数字が揃うと、手を入れる場所が絞れます。

  • 電話で完結したコールが多い場合は、利用者・家族への事前説明の作り直し
  • 判断に迷って緊急訪問になっている場合は、主訴ごとの判断手順書の整備
  • 当番回数に偏りがある場合は、当番表の組み直しと当番の単位の見直し
  • 一次受けの後の相談先がない場合は、外部の専門職への相談体制の整備

打ち手は一度に3つまでに絞り、翌月も同じ定義で測って変化を見てください。

まとめ

オンコールの実態は、出典のあいまいな全国平均ではなく、自事業所の記録から把握します。1コール1行で7項目を残し、月間コール件数・利用者あたりコール件数・出動率・夜間帯比率・一人あたり当番回数・一人あたり受電件数を同じ定義で集計し、前月と前年同月に並べる。平均だけでなく利用者別・担当者別の分布を見る。この手順であれば、来月から始められます。

記録は制度上の要件とも重なります。看護師以外が一次受けする場合の記録・報告や、届出内容と当番体制の一致は、いずれも日々の記録があって初めて確認できます。

出典