D to P with Nとは何か、精神科以外への広がりはあるのか

D to P with N(Doctor to Patient with Nurse)は、医師がオンライン診療を行う際に、患者宅に訪問看護師が同席して身体所見の確認や医師の指示を補助する診療形態です。制度上は精神科在宅患者支援管理料の枠組みで先行して整備されており、精神科訪問看護の現場では退院直後の患者フォローや服薬管理の場面で活用が進んでいます。

一方で、経営者や管理者の視点からは、精神科以外の領域でもD to P with Nを応用できないかという関心が高まっています。在宅緩和ケアや内科の慢性疾患管理は、医師の往診頻度と患者の状態変化のスピードにギャップが生じやすい領域であり、看護師同席によるオンライン診療のニーズは本来精神科に限らないためです。

ただし現行の診療報酬制度では、D to P with Nとして明確に算定できる項目は精神科領域が中心です。他領域での活用は、既存の医学管理料やオンライン診療料の枠組みの中で運用可能かどうかを個別に確認する必要があります。

在宅緩和ケアでD to P with Nが求められる理由は何か

在宅緩和ケアの現場では、次のような場面で看護師同席型のオンライン診療にニーズがあります。

  • 疼痛コントロールの調整局面で、医師の往診を待たずに麻薬の増減を判断したい場合
  • 終末期の急激な状態変化があり、家族が動揺している中で医師の説明を看護師が補足したい場合
  • 夜間や休日にオンコール対応した看護師が、翌朝の医師診療につなぐ橋渡しとして状況を報告したい場合

こうした場面では、看護師が患者のそばで医師の診察を補助することで、往診の回数を抑えながら医療の質を維持できる可能性があります。特に麻薬性鎮痛薬の調整は電話のみでの判断が難しく、看護師が実際にバイタルサインや表情、呼吸状態を観察しながら医師に伝える体制は、緩和ケアの質を高める上で有効と考えられます。

ただし在宅緩和ケアでは在宅がん医療総合診療料や在宅時医学総合管理料など既存の包括的な報酬体系が適用されているケースが多く、D to P with Nを独立した加算として算定できるかは現時点で明確でない部分があります。導入を検討する際は、地方厚生局への事前確認が欠かせません。

内科領域での活用シーンはどこにあるのか

内科の在宅医療では、慢性心不全や慢性呼吸不全、糖尿病などの管理において、状態が安定している患者へのフォローアップにオンライン診療を組み合わせる動きがあります。D to P with Nの考え方を応用できる可能性がある場面は次の通りです。

  1. 在宅酸素療法(HOT)を行っている患者で、酸素流量調整の判断に看護師の観察情報が必要な場合
  2. 特定行為研修を修了した看護師が、フィジカルアセスメントの結果を医師にリアルタイムで報告しながら診療を補助する場合
  3. 独居高齢者の療養状況を、家族に代わって看護師が医師との対話に同席する場合

これらは制度上、D to P with Nという名称の加算ではなく、既存のオンライン診療料や訪問看護療養費の枠組みの中で部分的に実現されているのが現状です。内科領域で本格的に制度化されるかどうかは、今後の診療報酬改定の議論を注視する必要があります。

精神科と非精神科でD to P with Nの算定要件はどう違うのか

精神科と非精神科では、D to P with Nを取り巻く制度の成熟度に差があります。主な違いを整理すると次の通りです。

項目精神科(現行制度)在宅緩和ケア・内科(現状)
算定の根拠精神科在宅患者支援管理料の要件に明記明確な専用加算はなく既存の医学管理料で運用
看護師の要件精神科訪問看護の経験や研修修了が前提となる場合が多い特定行為研修修了者など個別の技術要件が求められやすい
同席の目的服薬状況や精神症状の観察補助疼痛管理やバイタル変化の観察補助
記録要件同席内容と医師の指示内容の記録が必須訪問看護記録に準じた記録が求められるが統一様式は未整備
今後の見通し制度としてすでに一定の実績あり令和8年度改定に向けて対象拡大が論点になる可能性

この比較から分かるように、非精神科領域でD to P with Nを実践する場合は、既存の制度の隙間を丁寧に埋める運用設計が求められます。

導入を検討する際の実務チェックリスト

在宅緩和ケアや内科領域でD to P with Nの考え方を取り入れる場合、次の項目を事前に確認しておくことが望まれます。

  • 対象患者が算定している医学管理料の種類と、看護師同席の診療補助が算定要件に抵触しないかを確認したか
  • 同席する看護師の経験年数や研修受講状況が、医師や連携先の医療機関の求める水準を満たしているか
  • オンライン診療の実施場所や通信環境が、指針で求められるセキュリティ基準を満たしているか
  • 同席時の観察項目や報告内容をテンプレート化し、記録の抜け漏れを防ぐ体制があるか
  • 家族への説明と同意取得の手順が明文化されているか
  • 緊急時に医師の往診へ切り替える判断基準が事前に共有されているか

これらを整えないまま導入すると、算定できると思っていた費用が実は対象外だったという事態や、記録不備による指導リスクにつながりかねません。

想定される課題とリスクは何か

非精神科領域でD to P with Nを取り入れる際の課題は主に三つあります。

一つ目は制度上の位置づけが曖昧な点です。精神科のように明確な加算がないため、算定の可否をステーション側で慎重に判断する必要があります。

二つ目は看護師の専門性の担保です。緩和ケアの疼痛管理や内科的な急変対応は、精神科領域とは異なる臨床判断力が求められるため、同席する看護師の教育体制を別途整える必要があります。

三つ目は多職種連携の複雑さです。緩和ケアでは在宅医、訪問看護師、薬剤師、ケアマネジャーなど関係者が多く、オンライン診療の場に誰が同席し何を報告するかの役割分担を明確にしておかないと、情報の重複や漏れが生じやすくなります。

まとめ

D to P with Nは精神科在宅患者支援管理料を起点に整備された制度ですが、在宅緩和ケアや内科の在宅医療でも看護師同席型のオンライン診療へのニーズは確実に存在します。現時点では専用の算定項目がないため、既存の医学管理料や訪問看護療養費の枠組みの中で運用可能性を個別に見極める必要があります。導入を検討するステーションは、対象患者の算定状況、看護師の専門性、記録体制、緊急時対応のルールを事前に整理したうえで、地方厚生局への確認を経て段階的に取り入れることが望まれます。今後の診療報酬改定で対象領域が拡大される可能性もあるため、制度動向を継続的に注視する姿勢が経営判断において重要になります。