D to P with Nとは何か、まず前提を確認する

D to P with Nは、医師が患者宅等にいる患者に対してオンラインで診療を行う際、訪問看護師が患者のそばに同席し、医師の指示を受けながら診療の補助を行う形態です。厚生労働省の指針であるオンライン診療の適切な実施に関する指針において、看護師等の同席によるオンライン診療の実施方法が整理されています。

この形態が広がる背景には、医師が直接訪問しなくても医療的な評価や判断を行える利便性がありますが、同時に、現場で実際に手を動かすのは看護師であるという点から、法的責任の所在が曖昧になりやすいという課題があります。本記事では、看護師がどこまでの行為を担えるのか、事故が発生した際にどう対応すべきかを、法令と指針に基づいて整理します。

看護師の法的立場は保助看法が基準になる

訪問看護師の業務範囲を規定する基本法は保健師助産師看護師法です。同法では、看護師の業務を療養上の世話及び診療の補助と定めています。D to P with Nにおいて看護師が行う行為は、原則としてこの診療の補助に該当します。

診療の補助とは、医師の指示があって初めて適法に実施できる医行為を指します。つまり、D to P with Nの場での看護師の行為は、医師の指示があることが前提であり、指示の範囲を超えた判断や処置は、業務範囲を逸脱するリスクをはらみます。

ここで重要になるのが、指示の種類です。

包括的指示と具体的指示の違い

指示の種類内容D to P with Nでの扱い
包括的指示あらかじめ想定される状況に対する対応方針を事前に取り決めておくもの訪問看護指示書に基づく通常業務で用いられることが多い
具体的指示オンライン診療のその場で、医師が患者の状態を確認したうえで出す個別の指示D to P with Nでは診療中にその場で出されることが前提

D to P with Nの実施中は、医師がオンラインで患者の状態をリアルタイムに確認しながら指示を出すことが想定されています。このため、看護師が独自の臨床判断で処置の内容を変更したり、指示されていない処置を追加したりすることは、責任の所在を不明確にする要因になります。

医師の責任と看護師の責任はどう切り分けられるか

事故が発生した場合、責任の所在は一律に決まるものではなく、個別の状況によって判断されます。ただし、整理の軸としては次の2点が重要です。

  1. 医師の指示が適切であったか、指示の内容に誤りや不十分な点がなかったか
  2. 看護師が医師の指示に沿って正確に実施したか、指示を逸脱した行為がなかったか

医師の指示自体に誤りがあった場合は医師側の責任が問われやすく、指示は適切であったにもかかわらず看護師の実施段階でミスがあった場合は看護師個人の過失が問われる可能性があります。また、通信環境の不具合などオンライン診療特有の要因が事故に関与した場合は、機器やシステムの管理責任も検討対象になります。

この切り分けを行ううえで最も重要になるのが記録です。指示の内容、指示が出された時刻、実施した行為の内容、患者の状態変化を時系列で残しておくことが、事後の責任判断において看護師自身を守る material になります。

事故発生時に看護師が取るべき対応手順

D to P with N実施中に急変や事故が起きた場合、現場にいる看護師が最初に行動することになります。以下の順序で対応することが基本です。

ステップ1 患者の安全確保

何よりも先に、患者の生命・安全を確保する行動を取ります。オンラインでつながっている医師に状況を伝えながら、必要な応急処置について指示を仰ぎます。

ステップ2 医師への報告と指示の取得

状況を具体的に伝え、医師から明確な指示を得ます。この際、指示の内容を聞き漏らさないよう、可能であれば画面録画や通話記録の機能を活用し、後から指示内容を確認できるようにしておくことが望まれます。

ステップ3 記録の作成

発生した時刻、患者の状態、医師から受けた指示、実施した対応の内容を、できるだけ早いタイミングで記録します。記憶が薄れる前に記録することが、後の検証において正確性を保つ鍵になります。

ステップ4 事業所内への報告

管理者へ速やかに報告し、インシデントレポートまたはアクシデントレポートを作成します。これは事業所としての対応記録であると同時に、再発防止策を検討するための基礎資料になります。

ステップ5 医療機関との情報共有

主治医の診療録に当日のやり取りが正確に反映されるよう、訪問看護側からも報告書を提出し、情報の齟齬が生じないようにします。

ステップ6 重大事案の場合の対応

事故の程度によっては、医療法に基づく医療事故調査制度の対象になるかどうかを医療機関側と確認する必要があります。訪問看護ステーション単独で判断せず、連携する医療機関と相談のうえで対応方針を決めることが重要です。

記録として残すべき項目のチェックリスト

D to P with N実施時は、通常の訪問看護記録に加えて、オンライン診療特有の項目を記録に残しておく必要があります。

  • 診療開始時刻と終了時刻
  • 同席した看護師の氏名と資格
  • 医師から受けた指示の内容と指示を受けた時刻
  • 実施した処置やケアの具体的な内容
  • 通信状況に問題がなかったかどうか
  • 患者及び家族への説明内容と同意の有無
  • 急変や異常があった場合はその経過と対応内容

これらの項目を標準化した記録様式としてあらかじめ用意しておくことで、記録の抜け漏れを防ぎ、事故発生時の検証をスムーズに行うことができます。

訪問看護ステーションが事前に整備すべき体制

事故が起きてから対応を考えるのではなく、D to P with Nを実施する前の段階で体制を整えておくことが、看護師個人の責任リスクを軽減することにつながります。

  • D to P with N実施時の役割分担をマニュアル化しておく
  • 緊急時に医師と連絡が取れない場合の代替連絡手段を決めておく
  • 通信機器の不具合が起きた場合の対応手順を定めておく
  • 記録様式を統一し、全スタッフに周知しておく
  • 定期的に事例検討やシミュレーション研修を行う

こうした体制整備は、看護師個人の判断に責任を集中させないための組織的な備えであり、管理者の役割として重要です。

まとめ

D to P with Nにおける看護師の行為は、保助看法上の診療の補助に位置づけられ、医師の指示の範囲内で行われることが前提です。事故発生時の責任の所在は、医師の指示が適切であったかと、看護師がその指示に沿って正確に実施したかという2つの軸で判断されます。看護師自身を守るためにも、指示内容と実施内容を時系列で正確に記録する習慣を徹底することが欠かせません。また、ステーションとしても緊急時対応のマニュアル整備や記録様式の統一を進め、個人の判断に依存しない組織的な備えを進めておくことが求められます。

出典