D to P with Nの同席者は誰でもよいのか

D to P with N(Doctor to Patient with Nurse)は、医師によるオンライン診療の場に訪問看護師が同席し、視診や問診の補助、バイタル測定、患者の状態伝達などを行う診療形態です。在宅医療の現場で広がりを見せる一方、管理者からは「同席する看護師は誰でもよいのか」「特定行為研修を修了していないと対応できない場面があるのではないか」という疑問がよく寄せられます。

結論から言うと、D to P with Nの同席そのものに特定行為研修の修了は必須ではありません。バイタル測定や状態観察、医師への報告といった診療の補助行為であれば、一般の訪問看護師が同席して対応できます。一方で、医師の直接の指示を都度得ることが難しい状況で一定の医行為を実施する必要がある場合は、特定行為研修を修了した看護師と、医師があらかじめ作成した手順書の組み合わせが必要になります。

この記事では、D to P with Nの場面で一般の訪問看護師と特定行為研修修了看護師をどう使い分けるか、判断の軸と実務上の準備事項を整理します。

D to P with Nの制度上の位置づけを確認する

D to P with Nは、オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚生労働省)の中で、患者が看護師等の同席を受けながら医師の診療を受ける形態として位置づけられています。指針では、同席する看護師が行う行為は医師の指示の下での診療の補助の範囲にとどまることが前提とされており、医師が直接対面していない状況での医行為の実施には慎重な取り扱いが求められています。

在宅医療における情報通信機器を用いた診療については、診療報酬上も評価の対象となっており、具体的な算定要件は各年度の診療報酬改定の個別改定項目資料で確認できます。管理者は自事業所が算定を検討する場合、最新の告示内容を一次資料で確認したうえで体制を組む必要があります。

特定行為研修制度の枠組みを押さえる

特定行為研修制度は、保健師助産師看護師法に基づき、医師の判断を待たずに手順書により一定の診療の補助を行うための研修制度です。厚生労働省の整理では、特定行為は21区分38行為に分類されており、在宅・慢性期領域に関連する行為をまとめたパッケージ研修も用意されています。

特定行為研修を修了した看護師であっても、手順書がなければ特定行為を実施することはできません。手順書には次の事項を医師が定める必要があります。

  • 対象となる患者の病状の範囲
  • 診療の補助の内容
  • 特定行為を行うときに確認すべき事項
  • 医療機関の連絡先と連絡体制
  • 特定行為を行った後の医師への報告方法

D to P with Nの場面でこの手順書が整備されていれば、画面越しに医師が患者の状態を確認しながら、同席する特定行為研修修了看護師が手順書の範囲内で必要な処置を行うという役割分担が成立します。

役割分担を判断する3つの軸

同席者を一般の訪問看護師にするか、特定行為研修修了看護師にするかは、次の3つの軸で判断します。

1. 想定される医行為の内容

バイタル測定、聴診器を当てる位置の調整、患部の撮影や伝達といった観察・補助行為が中心であれば、一般の訪問看護師で対応可能です。脱水時の輸液の投与量調整や褥瘡の壊死組織のデブリードマンなど、特定行為に該当する処置が想定される場合は、該当区分の研修を修了した看護師の同席が必要です。

2. 医師の指示のタイミング

オンライン診療の最中に医師がリアルタイムで指示を出せる場合は、一般の訪問看護師がその場で指示を受けて対応することができます。一方、通信状況や患者の急変などにより、医師の個別指示を都度仰ぐことが困難な状況が想定される利用者については、あらかじめ手順書を整備し、特定行為研修修了看護師が同席する体制を検討します。

3. 利用者の病状の変動幅

病状が安定している利用者の定期的なフォローであれば一般の訪問看護師の同席で足りることが多く、病状の変動が大きく緊急の処置判断が必要になりやすい利用者には、特定行為研修修了看護師を優先的に配置する体制が望まれます。

同席者別の実施可能行為チェックリスト

訪問前に次の項目を確認し、同席者を決定します。

  • 今回の診療で想定される処置は診療の補助の範囲内か、特定行為に該当するか
  • 特定行為に該当する場合、該当区分の研修を修了した看護師が在籍しているか
  • 手順書が医師により作成され、対象患者の病状の範囲が明記されているか
  • 手順書に定める確認事項をその場で満たせる体制があるか
  • 特定行為実施後の医師への報告ルートが確保されているか
  • 通信環境が不安定な場合の代替手段(電話連絡等)が決まっているか

このチェックリストは訪問看護指示書や精神科訪問看護指示書の内容と照らし合わせながら運用すると、指示内容と実施行為の整合性を保ちやすくなります。

手順書整備を進める際の注意点

手順書は患者ごとに個別化されている必要があり、汎用的なひな形をそのまま流用することは想定されていません。管理者は特定行為研修を修了したスタッフが在籍していても、対象患者の病状の範囲を医師と事前にすり合わせずに手順書を運用しないよう注意が必要です。D to P with Nの頻度が高い利用者から優先的に手順書の整備を進め、主治医との合意形成に必要な時間を確保することが実務上のポイントになります。

記録に残すべき項目

D to P with Nを実施した際は、訪問看護記録に次の内容を残します。

  • 同席した看護師の氏名と資格(特定行為研修修了の有無)
  • 医師から受けた指示の内容
  • 実施した観察・処置の内容
  • 特定行為を実施した場合は該当する手順書の名称と病状の範囲との整合性
  • 医師への報告内容と報告時刻

実地指導の場面では、特定行為を実施した記録と手順書の内容が一致しているかが確認されることがあるため、記録の粒度を日頃から揃えておくことが望まれます。

まとめ

D to P with Nの同席者は、想定される医行為の内容、医師の指示を受けられるタイミング、利用者の病状の変動幅という3つの軸で判断します。観察や補助が中心であれば一般の訪問看護師で対応でき、特定行為が必要な場面では該当区分の研修を修了した看護師と医師が作成した手順書の組み合わせが不可欠です。制度の枠組みを正しく理解したうえで、利用者ごとに同席者と手順書を整備していくことが、安全で持続可能な体制づくりにつながります。

出典