オンコール件数はなぜ「読めない」と感じるのか

訪問看護のオンコール対応は、多くのステーションで管理者の頭痛の種になっています。何件かかってくるか分からない、当番のたびに睡眠時間が削られるかもしれない、という不安が離職や採用難につながっているケースは少なくありません。

しかし実際には、オンコールの発生は完全にランダムなわけではありません。利用者の重症度や状態像によって、コールが発生しやすい人とそうでない人がはっきり分かれています。この傾向を数値化し、あらかじめ月間の発生件数を見積もる仕組みが、重症度別リスクスコアリングです。

本記事では、利用者ごとのリスクをスコア化し、オンコール件数を予測するための具体的な設計方法と運用手順を解説します。

リスクスコアリングとは何か

リスクスコアリングとは、利用者ごとに複数の指標を点数化し、合計点でオンコール発生の可能性をランク分けする手法です。医療現場では褥瘡リスクのブレーデンスケールや転倒リスクアセスメントなど、同様の考え方がすでに広く使われています。オンコール予測に応用する場合、次のような視点で項目を設計します。

  • 医療的な重症度(算定加算の区分、医療処置の有無)
  • 生活環境のリスク(独居、家族の介護力)
  • 状態の不安定さ(直近の状態変化、入退院歴)
  • 終末期への近さ(ターミナルケアの対象かどうか)

重要なのは、スコアが高い利用者ほど過去の統計上オンコールが発生しやすいという相関を、自分のステーションのデータで裏付けておくことです。全国平均の目安はあくまで初期設定として使い、半年から1年ごとに自施設の実績で補正していきます。

重症度別リスクスコアの具体的な設計例

以下は、多くのステーションで応用しやすい配点例です。特別管理加算の判断基準を土台にしつつ、生活環境と状態変化の要素を加えています。

評価項目該当条件配点
特別管理加算I該当気管カニューレ、留置カテーテル等の管理20点
特別管理加算II該当在宅酸素、経管栄養等の管理10点
ターミナルケア対象医師が予後不良と判断し在宅看取りを予定15点
直近1か月の状態変化入退院、症状悪化、処方変更があった10点
独居または日中独居緊急時に家族がすぐ対応できない5点
認知症自立度III以上症状の自己申告が困難5点
医療処置の複雑さ複数の医療機器・処置を併用3点

合計点でリスクランクを3段階に分けます。

リスクランク合計スコア月間オンコール予測件数の目安
高リスク30点以上4〜6件
中リスク15〜29点1〜2件
低リスク14点以下0〜0.5件

この目安は前述の図表データとほぼ整合する形で設計しています。実際の運用では、自施設の過去6か月のオンコール記録と照らし合わせ、配点や閾値を調整してください。

スコアをオンコール予測にどう活用するか

利用者一人ひとりのスコアを算出したら、次の手順で月間の予測件数を組み立てます。

  1. 利用者名簿にリスクスコアとランクを付与する
  2. ランクごとの人数を集計する(例 高リスク5人、中リスク12人、低リスク30人)
  3. ランク別の発生件数目安を掛け合わせる
  4. 全体を合算し、月間の予測オンコール件数を算出する

具体例で計算してみます。

  • 高リスク5人 × 5件 = 25件
  • 中リスク12人 × 1.5件 = 18件
  • 低リスク30人 × 0.2件 = 6件
  • 合計予測件数 49件/月

この数字が分かれば、当番1人あたりの許容件数、当番人数、外部委託の活用範囲などを逆算できます。例えば当番1人が対応できる上限を月15件程度に設定するなら、この施設では当番を3〜4人体制でローテーションする必要がある、という判断ができます。

予測を運用に落とし込むためのチェックリスト

  • 利用者ごとのリスクスコアを訪問看護計画書の見直し時に更新しているか
  • ターミナル期に移行した利用者のスコアを都度見直しているか
  • 高リスク利用者が特定の曜日や当番に偏っていないか確認しているか
  • 過去のオンコール記録とスコア予測の乖離を月次で振り返っているか
  • 新規利用者の受け入れ時に事前スコアリングを行い、当番負担への影響を試算しているか

このチェックリストを毎月のカンファレンスで確認するだけでも、当番の偏りや見落としを早期に発見できます。

高リスク利用者への備えとD to P with Nの活用

高リスクにランクされた利用者は、夜間に判断に迷う場面が増えやすい層でもあります。ここで有効になるのが、訪問看護師が同席した状態で医師の診察を受けられるD to P with Nの体制です。

高リスク利用者をあらかじめリストアップしておき、対応可能なオンライン診療の窓口や嘱託医との連携ルールを個別に確認しておくことで、夜間の看護師単独判断のリスクを減らせます。特にターミナル期や医療処置が複雑な利用者については、オンコール発生時にすぐ医師に相談できる導線を用意しておくことが、看護師の安心感にも直結します。

リスクスコアリング導入でよくある失敗

  • 配点を細かくしすぎて現場が運用を続けられなくなる
  • 一度作ったスコアを更新せず、状態変化に追いつかなくなる
  • スコアの高さだけを見て、実際の当番の得意分野との組み合わせを考慮しない
  • 予測値と実績値の差を検証せず、精度が改善されないまま放置する

最初はシンプルな項目数から始め、3か月に一度は配点の妥当性を見直すサイクルを組み込むことが継続のコツです。

まとめ

オンコール件数は完全に予測不可能なものではなく、利用者の重症度や生活環境をスコア化することである程度の見通しを立てられます。特別管理加算の区分やターミナル期該当、独居状況などを点数化し、ランク別の発生件数目安と組み合わせることで、月間のオンコール件数を推計し、当番人数や外部委託の範囲を根拠を持って決められるようになります。導入初期は自施設のデータで補正を重ねながら、無理なく続けられる仕組みに育てていくことが重要です。