当番表を変える前に、1か月数える
オンコールの負担が話題になると、当番表の組み替えや手当の増額から手をつけたくなります。ただし、どのコールが誰にどれだけ集中しているかを数えないまま体制を変えると、負担の形が移動するだけで総量は変わりません。
先に行うのは1か月の実態調査です。特別な道具は要りません。必要なのは、数える項目を決めること、対応の直後に書くこと、決めた日に集計することの3つです。ここでは準備から見直しまでの手順を5段階で示します。
手順1 準備(調査を始める前の1週間)
準備で決めることは4つです。ここを曖昧にしたまま始めると、集計できない記録が残ります。
- 数える項目を決める(受電日時、受電者、利用者、主訴の区分、対応の区分、所要時間、医師への連絡の有無)
- 記入の様式を用意する(1件のコールを1行で書ける形にする)
- 記入するタイミングを決める(対応の直後。翌朝まとめて書かない)
- 集計する担当者と集計日を決める(翌月の最初の週のうち1日)
主訴と対応の区分は、選択肢をあらかじめ決めて全員に配ってください。自由記述にすると、集計のときに分類し直す手間が発生します。対応の区分は、電話で完結・翌日の訪問で対応・緊急訪問・救急要請の4つで足ります。
当番に入る全員に、調査の目的が個人の評価ではなく体制の見直しであることを先に伝えてください。ここが伝わっていないと、件数が過少に記録されます。
手順2 記録(1か月)
期間は月初から月末までの1か月です。記録するのは当番に入っている本人です。
- 対応が終わったらその場で書く
- 電話で完結したコールも必ず書く(最も抜けやすい)
- 対応しなかった着信、折り返しになった着信も書く
- 所要時間は受電から対応終了まで。緊急訪問は移動時間を含める
管理者は週に1度、記入漏れがないかだけを確認します。この段階で内容の良し悪しを指摘すると、記録が止まります。
手順3 集計(翌月の最初の週)
集計は決めた担当者が1人で行い、次の数字を出します。
| 出す数字 | 求め方 |
|---|---|
| 月間コール件数 | その月に受けたコールの総数 |
| 利用者あたりコール件数 | 月間コール件数 ÷ 月末時点の利用者数 |
| 出動率 | 緊急訪問に至ったコール数 ÷ 月間コール件数 |
| 夜間帯比率 | 22時〜6時の受電数 ÷ 月間コール件数 |
| 一人あたり当番回数 | 当番日数の合計 ÷ 当番に入る看護職員数 |
| 利用者別の件数 | 利用者ごとのコール件数(多い順に並べる) |
| 受電者別の件数 | 受電者ごとのコール件数と当番回数 |
平均だけでなく、利用者別と受電者別の並びを必ず出してください。負担の偏りは平均に隠れます。
手順4 読み合わせ(当番に入る全員で60分)
集計した数字は、会議の前日までに全員に配ります。その場で初めて見せると、数字の確認だけで時間が終わります。
読み合わせの進め方は次のとおりです。
- 数字が多いか少ないかを判定しない(比べる相手がまだない)
- 件数の多かった利用者について、その月に何が起きていたかを聞く
- 緊急訪問になったコールについて、判断に迷った点を聞く
- 電話で完結したコールについて、事前の説明で防げたものがあるかを聞く
出てきた話は、数字の横に一言で残しておきます。翌月の数字が動いたときの理由の候補になります。
手順5 見直し(打ち手は3つまで)
打ち手は絞ります。同時にいくつも変えると、翌月に数字が動いても理由が分かりません。
- 電話で完結したコールが多い場合は、利用者・家族への事前説明の作り直し
- 判断に迷った緊急訪問が多い場合は、主訴ごとの判断手順書の整備
- 当番回数や受電件数に偏りがある場合は、当番表の組み直し
- 一次受けの後に相談する先がない場合は、相談体制の整備
打ち手を決めたら、翌月も同じ項目・同じ定義で測ります。定義を変えると比較できなくなるため、様式は1年は固定してください。
調べる前に確認しておく制度上の点
体制の見直しを検討する前提として、次の3点を確認しておきます。
- 利用者・家族からの電話の一次受けを、自事業所以外の施設や従事者を経由させることは認められていない
- 看護師以外が一次受けする場合は当該訪問看護ステーションの職員に限られ、マニュアルの整備、看護師への速やかな報告、記録、利用者の同意、届出が必要
- 届出の内容と実際の当番体制が一致しているか
これらは24時間対応体制加算(医療保険)、緊急時訪問看護加算(介護保険)を算定する事業所の要件です。外部サービスの利用を検討する場合も、一次受けを含む提案は採用できません。
まとめ
オンコールの見直しは、当番表ではなく記録から始めます。準備で数える項目と様式を決め、1か月そのまま記録し、翌月の最初の週に集計し、全員で読み合わせ、打ち手を3つまでに絞る。この5段階を1周すると、翌月から比較できる数字が手に入ります。
着手の前に、一次受けを外部に出せないこと、看護師以外が受ける場合の要件、届出と実態の一致の3点を確認してください。体制を変えてから要件を満たしていないと分かると、加算の算定にさかのぼって影響します。
出典
- 訪問看護ステーションの届出基準(令和8年3月5日 保医発0305第9号)別添 2(1) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732114.pdf
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について(老企第36号)第二の4(18)⑥
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正(令和8年厚生労働省告示第74号・令和8年6月1日適用) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665206.pdf
